結局、私はこれといったキャラ付けをせず、毎日毎日かわいいと思ったものをSNSにあげ、たまに仮面の自撮りを載せ、週に一回リプ返でファンサービスを続けることにした。
「ふー。今日も踊ったねぇ。」
レモンが毎日あげる動画のため、水曜日と土曜日にまとめてダンス動画を撮って1か月になる。今日は学校帰りにカラオケに寄って、2本の新作ダンスの撮影だった。
「もう、毎日アイドルやってられればいいのに。」
私の心の底からの声だった。
「うん。2組だったらやってられないよね。」
スカイの同情にレモンもうんうんとうなづいている。
春休み中にレモンがつかんできたやばい先生はウワサの通り私たち2年生の担任になった。そしてあろうことか私のクラスの担任になってしまったのだった。
「聞いたけど、2組って本当にバイト禁止なんでしょ? 『アイドルやってます!』なんて、絶対ダメじゃん。」
そう。レモンが手に入れる情報はいつも正しい。
私たちの学校はアルバイトが原則禁止となっている。「原則」というのは今はほとんど誰も守っていないルールだからだ。その慣例を破って「アルバイト禁止」を推しているのがうちの担任「米澤赤福」というわけだ。
アルバイト、ツーブロック、スカート丈、化粧。今まで「原則禁止」で誰も守らなくなってきた校則破りを摘発しまくっている。おかげで4月の1か月間、2組教室では常に放課後保護者面談をしていた。
「いいよ、米澤赤福がきちんとした、『これぞ教師』って感じなら。それならみんな保護者面談になる前に直すんだけどね。」
「私の耳にまで届いてるんだけど、あだ名『赤ちゃん』なんだって?」
ウワサ話にうといスカイの耳にまで入るとは。そのとおり、やることなすことが赤ちゃんなのだ。
「授業は教科書見とけだし、朝の連絡は隣のクラスに聞いて来いだし、何のために教師になったの? って感じ。」
早口で本音がダダ漏れしてしまった。
「それでいて行事好きなんでしょ? この前も新歓の部活発表でノリノリダンス後ろでしてたって目撃情報あるよ。」
「あのフォルムで? やだー。」
レモンの仕入れたウワサもおそらく本当だ。米澤赤福は歌ったり踊ったり、下手くそなくせにそういうことが大好き。私たち生徒に混ざってやっていればまだ可愛げある先生だけど、完全に自分の世界に浸ってしまう。
さらにスカイの言う通りイケメンでもなければイケオジでもない。小太りで昨日お風呂に入ったのか心配なくらい髪の毛が脂ぎっている。
「マジで、早く担任変わらないかなあ。」
「あ!!」
たわいないおしゃべりをスカイの悲鳴が切り裂いた。
「どうしたの?」
「間違って、リア垢に歌ってみた載せちゃった。」
「早く削除して! 早く! 早く!」
スカイは悲鳴とともに落としてしまったスマホを拾い上げて、震える指で投稿を削除した。
「ふー、危なかった。」
「もう、こんな凡ミスで仮面が落ちちゃったら大変じゃない。」
「すぐ気づけてよかったよ。うん、そういうことにしよ!」
リーダーとしてしっかりたしなめる私に対して、レモンはいいようにとらえてうまくこの場を収めてくれた。
「毎日投稿すると、こういうことも起こりやすいから、気をつけないとね。」
深呼吸で自身を落ち着けながら、スカイは冷静にこの出来事をふりかえっていた。
「ふー。今日も踊ったねぇ。」
レモンが毎日あげる動画のため、水曜日と土曜日にまとめてダンス動画を撮って1か月になる。今日は学校帰りにカラオケに寄って、2本の新作ダンスの撮影だった。
「もう、毎日アイドルやってられればいいのに。」
私の心の底からの声だった。
「うん。2組だったらやってられないよね。」
スカイの同情にレモンもうんうんとうなづいている。
春休み中にレモンがつかんできたやばい先生はウワサの通り私たち2年生の担任になった。そしてあろうことか私のクラスの担任になってしまったのだった。
「聞いたけど、2組って本当にバイト禁止なんでしょ? 『アイドルやってます!』なんて、絶対ダメじゃん。」
そう。レモンが手に入れる情報はいつも正しい。
私たちの学校はアルバイトが原則禁止となっている。「原則」というのは今はほとんど誰も守っていないルールだからだ。その慣例を破って「アルバイト禁止」を推しているのがうちの担任「米澤赤福」というわけだ。
アルバイト、ツーブロック、スカート丈、化粧。今まで「原則禁止」で誰も守らなくなってきた校則破りを摘発しまくっている。おかげで4月の1か月間、2組教室では常に放課後保護者面談をしていた。
「いいよ、米澤赤福がきちんとした、『これぞ教師』って感じなら。それならみんな保護者面談になる前に直すんだけどね。」
「私の耳にまで届いてるんだけど、あだ名『赤ちゃん』なんだって?」
ウワサ話にうといスカイの耳にまで入るとは。そのとおり、やることなすことが赤ちゃんなのだ。
「授業は教科書見とけだし、朝の連絡は隣のクラスに聞いて来いだし、何のために教師になったの? って感じ。」
早口で本音がダダ漏れしてしまった。
「それでいて行事好きなんでしょ? この前も新歓の部活発表でノリノリダンス後ろでしてたって目撃情報あるよ。」
「あのフォルムで? やだー。」
レモンの仕入れたウワサもおそらく本当だ。米澤赤福は歌ったり踊ったり、下手くそなくせにそういうことが大好き。私たち生徒に混ざってやっていればまだ可愛げある先生だけど、完全に自分の世界に浸ってしまう。
さらにスカイの言う通りイケメンでもなければイケオジでもない。小太りで昨日お風呂に入ったのか心配なくらい髪の毛が脂ぎっている。
「マジで、早く担任変わらないかなあ。」
「あ!!」
たわいないおしゃべりをスカイの悲鳴が切り裂いた。
「どうしたの?」
「間違って、リア垢に歌ってみた載せちゃった。」
「早く削除して! 早く! 早く!」
スカイは悲鳴とともに落としてしまったスマホを拾い上げて、震える指で投稿を削除した。
「ふー、危なかった。」
「もう、こんな凡ミスで仮面が落ちちゃったら大変じゃない。」
「すぐ気づけてよかったよ。うん、そういうことにしよ!」
リーダーとしてしっかりたしなめる私に対して、レモンはいいようにとらえてうまくこの場を収めてくれた。
「毎日投稿すると、こういうことも起こりやすいから、気をつけないとね。」
深呼吸で自身を落ち着けながら、スカイは冷静にこの出来事をふりかえっていた。



