春休み最後の日曜日。私たちベビーフェイスは都内の事務所に呼び出された。
ベビーフェイスは高校の同級生3人組。私の他にベビーレモンとベビースカイが居る。公私共に仲が良いけど、周りに悟られないように高校生としてはあまり関わらないようにしている。だからこうして事務所に集められたときの方が高校生らしくわちゃわちゃできるのだ。
「ねー、聞いた? うちらの学年に新しい先生が担任で入るんだって。」
ベビーレモンこと山口亜津子は3人の中で一番交友範囲が広い。だからこういう小ネタが入ってくるときはだいたいレモン情報だ。
「えー、知らない知らない。どんな先生なの?」
「なんかヤバいらしいよ。東京の高校クビになったとか。」
「えー、そんな教師のクラスになりたくなーい!」
レモンが持ってきた情報を掘り下げ、きゃーきゃー茶々を入れるのがベビースカイこと松本佳奈の立ち位置。
「まーまー、まだウワサでしょ。それに8クラスあるんだから、全員クラスが違ってもうちらのクラスになるほうが確率低いよ。」
こうやって散々ウワサと憶測で広がった話を現実にまとめ込むのがリーダーの私の役割。プライベートではそんな立ち回りでうまく回っているのだった。
「お疲れさま。なんか盛り上がってたじゃない。学校の話? 普段はできないもんね。さっそくだけど、ベビーフェイスの話にして良い?」
どんなに盛り上がった話も自分の話したいことにサクッと斬ってしまうのが、マネージャー青田宗次、通称「あおたん」だ。親よりも年上な50代半ばのベテランさん。ちょっとSNSでバズっただけの私たちにこんなに仕事ができる人が付くのは、それだけ素質を見込まれたのだと勝手に喜んでいた。
「さて、うちの事務所、まだ紅白アーティストが出てないのは知ってるよね?」
「は、はい。」
紅白アーティストとは年末の歌合戦に出場したアーティスト。
「この前の企画会議で、ベビーフェイスを初の紅白アーティストに仕上げようという話になったんだ。」
「え、もう紅白って決まるんですか!?」
「そんなわけないでしょ、まだ4月だよ、スカイ。」
こういう勘違いが多いのもスカイ。
あおたんの話をまとめると、こうだ。
紅白アーティストに「仕上げる」というのは、推していくということ。映画やドラマの主題歌をはじめ、話題になりそうな仕事は優先的に私たちに回されるようだ。これまでの、正直「満腹ショートケーキ」の一発屋とは比べものにならない忙しさを覚悟するように、とのことだった。
そしてもう一つ。SNSでバズれ、とのことだ。
今の時代、新人枠を狙うには欠かせない要素となっている。でもいま私たちが使ってるアカウントは、アマチュア時代にレモンが作った「ベビーフェイス公式(仮)」の一つだけ。そこに一つだけ上げた「満腹ショートケーキ」が大バズりしたのがデビューのきっかけだ。
「グループアカウントで新曲を載せても、限界ありますよね?」
「今の『初恋レモネード』もいまいちですし。」
アニメ映画の主題歌としてリリースした「初恋レモネード」は確かに聞かれてはいるが、「満腹ショートケーキ」ほどのインパクトはない。
「そうだよな。だから個人アカウントも開設することにした。」
そう言って配られたレジュメには3種類のSNS個人アカウントのIDとパスワードが書かれていた。
あおたんが言うには、個人アカウントは自由に活用してよいとのことだった。毎日ダンス動画をあげてもいいし、メイク公開をしてもいい。仮面アイドルを死守した、素性がバレないような投稿であれば良いとのことだった。
「今の時代、なにがバズるのか予想がつかないのが正直なところだ。とにかく、それぞれのキャラを出して、バズってくれ。」
ベビーフェイスは高校の同級生3人組。私の他にベビーレモンとベビースカイが居る。公私共に仲が良いけど、周りに悟られないように高校生としてはあまり関わらないようにしている。だからこうして事務所に集められたときの方が高校生らしくわちゃわちゃできるのだ。
「ねー、聞いた? うちらの学年に新しい先生が担任で入るんだって。」
ベビーレモンこと山口亜津子は3人の中で一番交友範囲が広い。だからこういう小ネタが入ってくるときはだいたいレモン情報だ。
「えー、知らない知らない。どんな先生なの?」
「なんかヤバいらしいよ。東京の高校クビになったとか。」
「えー、そんな教師のクラスになりたくなーい!」
レモンが持ってきた情報を掘り下げ、きゃーきゃー茶々を入れるのがベビースカイこと松本佳奈の立ち位置。
「まーまー、まだウワサでしょ。それに8クラスあるんだから、全員クラスが違ってもうちらのクラスになるほうが確率低いよ。」
こうやって散々ウワサと憶測で広がった話を現実にまとめ込むのがリーダーの私の役割。プライベートではそんな立ち回りでうまく回っているのだった。
「お疲れさま。なんか盛り上がってたじゃない。学校の話? 普段はできないもんね。さっそくだけど、ベビーフェイスの話にして良い?」
どんなに盛り上がった話も自分の話したいことにサクッと斬ってしまうのが、マネージャー青田宗次、通称「あおたん」だ。親よりも年上な50代半ばのベテランさん。ちょっとSNSでバズっただけの私たちにこんなに仕事ができる人が付くのは、それだけ素質を見込まれたのだと勝手に喜んでいた。
「さて、うちの事務所、まだ紅白アーティストが出てないのは知ってるよね?」
「は、はい。」
紅白アーティストとは年末の歌合戦に出場したアーティスト。
「この前の企画会議で、ベビーフェイスを初の紅白アーティストに仕上げようという話になったんだ。」
「え、もう紅白って決まるんですか!?」
「そんなわけないでしょ、まだ4月だよ、スカイ。」
こういう勘違いが多いのもスカイ。
あおたんの話をまとめると、こうだ。
紅白アーティストに「仕上げる」というのは、推していくということ。映画やドラマの主題歌をはじめ、話題になりそうな仕事は優先的に私たちに回されるようだ。これまでの、正直「満腹ショートケーキ」の一発屋とは比べものにならない忙しさを覚悟するように、とのことだった。
そしてもう一つ。SNSでバズれ、とのことだ。
今の時代、新人枠を狙うには欠かせない要素となっている。でもいま私たちが使ってるアカウントは、アマチュア時代にレモンが作った「ベビーフェイス公式(仮)」の一つだけ。そこに一つだけ上げた「満腹ショートケーキ」が大バズりしたのがデビューのきっかけだ。
「グループアカウントで新曲を載せても、限界ありますよね?」
「今の『初恋レモネード』もいまいちですし。」
アニメ映画の主題歌としてリリースした「初恋レモネード」は確かに聞かれてはいるが、「満腹ショートケーキ」ほどのインパクトはない。
「そうだよな。だから個人アカウントも開設することにした。」
そう言って配られたレジュメには3種類のSNS個人アカウントのIDとパスワードが書かれていた。
あおたんが言うには、個人アカウントは自由に活用してよいとのことだった。毎日ダンス動画をあげてもいいし、メイク公開をしてもいい。仮面アイドルを死守した、素性がバレないような投稿であれば良いとのことだった。
「今の時代、なにがバズるのか予想がつかないのが正直なところだ。とにかく、それぞれのキャラを出して、バズってくれ。」



