私は全てを失った。ベビーフェイスは「重大な契約違反」とされて即時解雇。夏フェスも紅白も「芸能人」という地位も、全て失った。それどころか家族からの「いいお姉ちゃん」というポディションも失っていた。嘘をついてアイドル活動をしていたことに父は激怒し母も失望してしまっていた。

 「好きなのはいいけど、なっていいなんて言ってないじゃない!」

 懸命に学費を稼ぐ、いいお姉ちゃんだと思っていたら、誰彼構わず嘘の大好きを振り撒いていたのだ。それであろうことか担任の中年赤ちゃん親父を虜にしてしまっていたなんて。すっかり「お姉ちゃん」も崩れてしまった。せっかく貯めてきたお金も、契約解除の違約金でほとんど残らなかった。

 また以前のような脅迫メッセージも頻繁にくるようになった。「○ね」が連打された、本当に脅迫のようなメッセージ。もちろん学校、米澤赤福にも相談したけど…。

 「ピンクたん。オレ、嘘つきたんのために仕事はできないなあ。」

 と言われる始末。どんどん追い込まれて学校を休むことも増えた。

 「ピンクたん、今日もお仕事でちゅか? あ、クビになったんだった〜。」

 休みの連絡を入れればこれだ。アイドルだった私のことも、今辛い私のことも、両方抉ってくる米澤赤福め。

 「さおりちゃん、最近見ないけど、どうしたの?」

 怜くんからラインが来る。もう、こんなになってしまった私のことを怜くんは好きになってくれるのだろうか?

 一か八か、私はことの全てを怜くんに伝えることにした。