「は? 帰るだと??」

 「でもおばあちゃんが心配で…。」

 「学校祭は明日だぞ、何考えてんだ!」

 「す、すみません!!」

 米澤赤福にこってり絞られて、逃げるように学校を後にした。

 ベビーフェイスはSNSの地道な活用もあり、新曲の「青春ブルーハワイ」の売れ行きが絶好調だ。今日は学校祭前日でみんなでワイワイ準備を楽しみたかったところではあるが、今日も仕事だ。
 お祭りになるとはしゃぎだす米澤赤福が早退をすんなり認めるわけがなく、「おばあちゃんが病気」の技を使ってもこんなに怒られてしまった。

 「あおたん、これ以上学校休むのはキツイですよー。」

 「すまんなぁ。でも、こういう波は逃すと一生売れないからなぁ、もう一踏ん張りだ!」

 そう、テレビの歌番組生歌唱が入ったのだ。ただでさえ忙しいスケジュールでなるべく学校を優先させたかったタイミング。しかも急遽ではあるけど、この波は逃せない。それぞれのクラスに無理を言って強行出演を決行した。

 「ありがとうございました!」

 「お疲れさまでした!」

 「またお願いします!」

 生歌唱を終えて楽屋に帰ると、学校の疲れもたまっていて、着替え用のたたみ2畳ほどの小上がりに3人で寝転んでしまった。

 「みんなお疲れ! 今日もよかったよ!」

 「あおたん、疲れたぁ!」

 「テレビってライブより緊張するね。」

 「明日はやっと休み! だけど学校祭か。」

 衣装のスカートを履いているにも関わらず、大股を開いて、いつでものぞき放題なくらいリラックスして疲れを表現している。

 「お疲れのところ悪いんだけど、ちょっと立ってもらっていい?」

 あおたんにうながされて、衣装を整えて私がセンターの歌唱隊形をとる。あおたんがスマホを横に構え、ボタンを押して話し始めた。

 「なんと、ベビーフェイス、夏フェス出場決まりました!!」

 「え、え、え!!!」

 3人手を取り合い、スカートがめくれそうなくらい足をバタつかせて喜びを表現する。

 「学校祭終わったら新曲練習スタートするよ! 夏フェス前にもうひとバズり、頼んだよ!」