そんなの、言えるはずがなかった。自分が一人でいるのが嫌だから友達を作るとか、毎日を楽しく過ごしたいから友達を作るとか、“特別”がほしいから友達を作るとか。自分の欲を埋めるために誰かを利用するなんて、私には理解できなかった。そう申し込む相手に申し訳なくて仕方がないのだ。私は人に恵まれてきた。いじめられたわけでも、仲間外れにされたわけでもない。周りにいた人は、皆いい人だった。だからこそ、そんな風にいい人を、自分のために利用したくなかった。友達がいるから一人じゃない。友達がいるから毎日が楽しい。それは理解できた。けれどやはり、一人が嫌だから、毎日を楽しみたいから、親友を作りたいから、友達を作るというのは納得できなかった。友達がどうして必要なのか、どうやって作るのか、私はついに知らずに育ってしまったのだ。
だから高校に入学した私は、一人だった。声をかけてくれた生徒もいた。けれどもう、どう接すればいいのかわからずに、どこか他人行儀になる始末だ。挙句の果てには相手も私に遠慮して距離を取るようになる。いつも一人でいる子。そう思われても仕方がない。誰かと一緒にいたいと思えれば良いのだろうか。友達が何かなんて気にしなければいいのだろうか。そんなことを考えなかったわけでもない。けれどやはり、打算的に友人を作る気にはどうしてもなれなかった。きっと、これからもそうだ。私を囲む見えない壁は、ずっとずっとそこにある。見えないから気がつかないだけで、触れればわかる。分厚い壁だ。
「きいちゃん、学校どう?」
夕食時に母がそう尋ねてきたので、私は中学生の頃を思い出して笑って見せた。そう、皆が“クラスメイト”ではなく“友人”だと思っていたあの能天気な頃を。
「楽しいよ」
友達ができたかどうか母が聞いてくる前に、私は話題を変えようとテレビに気を取られたふりをした。けれど母はどうしてか、私の高校生活の話題にはしつこく触れてきた。
「友達とかできた?」
「うん」
「本当!?いいなー。私も女子高生の友達ほしいー」
だから高校に入学した私は、一人だった。声をかけてくれた生徒もいた。けれどもう、どう接すればいいのかわからずに、どこか他人行儀になる始末だ。挙句の果てには相手も私に遠慮して距離を取るようになる。いつも一人でいる子。そう思われても仕方がない。誰かと一緒にいたいと思えれば良いのだろうか。友達が何かなんて気にしなければいいのだろうか。そんなことを考えなかったわけでもない。けれどやはり、打算的に友人を作る気にはどうしてもなれなかった。きっと、これからもそうだ。私を囲む見えない壁は、ずっとずっとそこにある。見えないから気がつかないだけで、触れればわかる。分厚い壁だ。
「きいちゃん、学校どう?」
夕食時に母がそう尋ねてきたので、私は中学生の頃を思い出して笑って見せた。そう、皆が“クラスメイト”ではなく“友人”だと思っていたあの能天気な頃を。
「楽しいよ」
友達ができたかどうか母が聞いてくる前に、私は話題を変えようとテレビに気を取られたふりをした。けれど母はどうしてか、私の高校生活の話題にはしつこく触れてきた。
「友達とかできた?」
「うん」
「本当!?いいなー。私も女子高生の友達ほしいー」