「一から十まで読む必要はないから。ほら、問題は“彼は何の事故にあったか”でしょ?だからこの文からaccidentとかinjuryとかの事故に関する単語を探せばいいんだよ。ほら、ここ」
泉さんは眉をひそめながら教科書の文を指でおった。
「じゃあ、答えはイ?」
「よく読んで。前半は第三段落に一致してるけれど、後半は本文と真逆のこと言ってるでしょ。ひっかけだよ」
こんなやり取りをしながら、私達は毎週勉強をした。だから本番にその少年の長文が出た時は、やった、と思う反面、彼女がうまく解けているか不安でもあった。けれど彼女は私の不安をよそに、英語で八十点を取るという目標を見事に達成した。テスト返却日、泉さんは答案用紙をひらひらさせながら私の席まできた。
「みて!八十二点!きいちゃんのおかげでこんなに点数とれた!はじめてだよ。ありがと!」
おめでとう、と言いながら私は泉さんを小突いて、杉野の方を見た。前々から気づいてはいたが、杉野も泉さんに気があるらしい。ちらちらと彼女の方を見ているのはばればれだった。彼女はふと目が合った杉野に、真っ赤な顔で会釈をすると私を睨んだ。
「わかってるってば。今日言うから。もう」
「頑張って」
泉さんは、頑張る、と言っていたが、放課後、いざ杉野に伝えに行くとなった時、涙目で振り返ってきた。
「もしふられても、笑わないでね・・・」
あまりにも頼りない声でそう言うので、私は思わず吹き出しそうになってしまったが、すんでのところで堪えて頷いた。
「うん。そんなこと、絶対にないから」
この日から泉さんは、杉野と付き合う事になった。
杉野と泉さんが付き合った話題でクラスが盛り上がり続けるまま、私達は終業式を迎えた。次皆と会う時は二年生だ。終業式当日、家に帰るとめずらしく父と母がいた。
「おかえりー!きいちゃん、おかえりおかえりー!」
「え。どうしてこんなに早いの?」
驚いた私がそう聞くと、照れ臭そうに首筋を掻く父の隣で、母が笑った。
「最近忙しくて三人でご飯食べられてなかったでしょ。だからきいちゃんが無事に一年生を終了した今日ぐらいは、みんなで食べたくて」
「別にそんなの、いいのに」
泉さんは眉をひそめながら教科書の文を指でおった。
「じゃあ、答えはイ?」
「よく読んで。前半は第三段落に一致してるけれど、後半は本文と真逆のこと言ってるでしょ。ひっかけだよ」
こんなやり取りをしながら、私達は毎週勉強をした。だから本番にその少年の長文が出た時は、やった、と思う反面、彼女がうまく解けているか不安でもあった。けれど彼女は私の不安をよそに、英語で八十点を取るという目標を見事に達成した。テスト返却日、泉さんは答案用紙をひらひらさせながら私の席まできた。
「みて!八十二点!きいちゃんのおかげでこんなに点数とれた!はじめてだよ。ありがと!」
おめでとう、と言いながら私は泉さんを小突いて、杉野の方を見た。前々から気づいてはいたが、杉野も泉さんに気があるらしい。ちらちらと彼女の方を見ているのはばればれだった。彼女はふと目が合った杉野に、真っ赤な顔で会釈をすると私を睨んだ。
「わかってるってば。今日言うから。もう」
「頑張って」
泉さんは、頑張る、と言っていたが、放課後、いざ杉野に伝えに行くとなった時、涙目で振り返ってきた。
「もしふられても、笑わないでね・・・」
あまりにも頼りない声でそう言うので、私は思わず吹き出しそうになってしまったが、すんでのところで堪えて頷いた。
「うん。そんなこと、絶対にないから」
この日から泉さんは、杉野と付き合う事になった。
杉野と泉さんが付き合った話題でクラスが盛り上がり続けるまま、私達は終業式を迎えた。次皆と会う時は二年生だ。終業式当日、家に帰るとめずらしく父と母がいた。
「おかえりー!きいちゃん、おかえりおかえりー!」
「え。どうしてこんなに早いの?」
驚いた私がそう聞くと、照れ臭そうに首筋を掻く父の隣で、母が笑った。
「最近忙しくて三人でご飯食べられてなかったでしょ。だからきいちゃんが無事に一年生を終了した今日ぐらいは、みんなで食べたくて」
「別にそんなの、いいのに」