夜、服を返却するという口実で鮫原先生の家に謝罪しに行った。
「ごめんなさい、二度と昨日みたいなことはしません。だから、捨てないでください」
口を突いて出たのはあまりに情けない言葉だった。
「入りなさい」
ドアが開いて、僕は許された。いつもと同じように先生が用意したワンピースを着てメイクをした後、ロングヘアのカツラをかぶれば、僕は女の人になる。
「やっぱり、センセイだ……」
僕にしか見せない眼差しを向けられれば、そこに恋愛感情がなくても舞い上がってしまう。
「センセイ、私、ちゃんといい先生できてますか?」
「鮫原先生は誰よりもいい先生ですよ」
僕の答えは本心だが、本来であれば僕が教えを乞う立場なのに昼間と立場が逆転している。ロマンティックなやりとりではないが、彼女が他人に対して作っている巨大な壁の向こうにいる本当の彼女に僕だけが触れられていると錯覚する。
先生が眠ったのは午前二時ごろのことだった。この寝顔が愛おしくて、僕は「きらきら星」のメロディにのせて子守唄を歌う。
「羊が二匹 並んで眠る
柵を飛び越え 疲れて眠る
羊が二匹 おやすみなさい」
先生の目から一筋の涙が伝った。
「ごめんなさい、二度と昨日みたいなことはしません。だから、捨てないでください」
口を突いて出たのはあまりに情けない言葉だった。
「入りなさい」
ドアが開いて、僕は許された。いつもと同じように先生が用意したワンピースを着てメイクをした後、ロングヘアのカツラをかぶれば、僕は女の人になる。
「やっぱり、センセイだ……」
僕にしか見せない眼差しを向けられれば、そこに恋愛感情がなくても舞い上がってしまう。
「センセイ、私、ちゃんといい先生できてますか?」
「鮫原先生は誰よりもいい先生ですよ」
僕の答えは本心だが、本来であれば僕が教えを乞う立場なのに昼間と立場が逆転している。ロマンティックなやりとりではないが、彼女が他人に対して作っている巨大な壁の向こうにいる本当の彼女に僕だけが触れられていると錯覚する。
先生が眠ったのは午前二時ごろのことだった。この寝顔が愛おしくて、僕は「きらきら星」のメロディにのせて子守唄を歌う。
「羊が二匹 並んで眠る
柵を飛び越え 疲れて眠る
羊が二匹 おやすみなさい」
先生の目から一筋の涙が伝った。