これが聖職者としてあるべき姿かと問われれば、間違いなくノーだ。母校での教育実習はもう終盤になるが、毎晩担当教諭の鮫原先生のマンションを訪れている。
 壁の時計は午前零時をさしている。小さな水玉模様をあしらった上品な紺色のワンピースに着替え、慣れない化粧をして、先生の着せ替え人形になる。憂いを帯びた美しい瞳と見つめ合うだけで世界が無音になる。
「鮫原先生……」
 ふたりきりの空間で呼ぶその響きは背徳的だった。
「センセイ……」
 学校では見せない表情の鮫原先生に呼ばれ、立ったまま抱きしめ合う。それだけだ。それ以上のことはしない。それでも、この夜が永遠に続いてほしいと今日も願う。