静かな昼食を終え、手洗い場が混雑し始める前に急いで歯磨きを終わらせる。
ついでにトイレに入ってまもなくして、にぎやかな女子数人の声が近づいてきた。
彼女たちもトイレに来るのか、どんどん会話がはっきりと聞こえはじめる。

「えー、それがっかり過ぎる! 写真見たときすっごいイケメンって思ったのに〜」
「ほんと詐欺やめてほしいよね。今、どう別れようか必死に考えてる」
「あははっ、ヒドいですよ先輩」
「ひどいのはあっちだって。あたしの恋を返してほしい!」
「あはははっ」

誰の声なのかはっきりわかり、私は個室の中でぎくっとして固まった。

──3年生の派手なグループの先輩2人と、彼女たちと同じ部活で仲がいいらしい、クラスメイトの久保さんだ。

久保さんとはそんなに親しくないものの、何か用件があったり、近くにいたりしたら雑談はする、普通のクラスメイトだと思う。

しかし、3年生の先輩2人には、少し嫌な思い出があるのだ。