「……午後に集合して、映画がいいかな。そのあとにちょっと服見るとか」
「いいな。チケット買って、昼飯食ってから映画館行くか」
「お昼は、ちょっと……お小遣いがピンチだから……」

歯切れ悪く言うと、高瀬くんが「なんだ」とほっとしたように笑う。

「俺も小遣いもらってる身分だから豪華なもんとかは無理だけど、普通に軽く昼飯くらいなら全然おごるよ」
「それは悪いよ……!」

嘘の言い訳を重ねるほどに、どんどんつらくなってくる。

せっかく誘ってくれているのに、これじゃあ高瀬くんにも嫌な思いをさせてしまうかもしれない。
不安になって高瀬くんを見ると、彼もこちらをじっと見ていた。

「そもそも、出かけるのが嫌?」
「……っ、そうじゃなくて……!」


──駄目だ。これ以上、嘘やでまかせの口実を高瀬くんにぶつけたくない。

そう思うと、半ば無意識に言葉が出てきていた。


「私、高瀬くんが思ってるような感じじゃないと思う」
「……どういうこと?」
「マスク補正かかってマシに見えてるだけで、特別綺麗でもないし、可愛くもないから。食事のときってマスク外すから、それでがっかりされたらって思ったら、ちょっと……勇気が湧かなくて……」
「…………」

沈黙が流れて、気まずい。

デートの話も流れるだろうか。

恐る恐る顔を上げると、高瀬くんは驚いた顔で固まっていた。

「福原さんさ」
「はい」
「俺にがっかりされたくないってことは、結構俺のこと好き?」
「……!」

完全に予想外な方向の言葉が返ってきて、今度は私が固まる番だった。

「……そうかも。うん……」
「よっしゃ!」

ガッツポーズをした高瀬くんは、駅へ向かって再びゆっくりと足を進め始める。

「福原さんが嫌なら、無理に見せろとか言わないし、ごはんもなしでいい」
「本当?」
「うん。デート自体が嫌じゃないなら、とりあえず今度の土曜あけといて」
「……わかった。あの……楽しみにしてる」
「俺も」