彼は、街ゆく人の邪魔にならないように、メインストリートから一歩細めの道に入ったあたりで立ち止まる。
そして、改めて私と向き合った。

「さっきはいきなりごめん。ちょっと、いろいろあって」

改めて謝ってくるあたり、悪い人ではなさそうな気がする。
でも、気になるのは『いろいろあって』という部分だ。

「それって……さっきはやっぱり罰ゲームとかだったってこと?」
「いや、それは違う。付き合ってほしいのは本当で……キモかったらほんとごめんなんだけど、前から電車でときどき見かけたりして気になってた。優しい子なんだなとか思って……」
(……優しい?)

話したこともないので、告白されるなら見た目の何かが好みだったのだろうかと思っていた。
しかし、まったく関係なさそうなワードが出てきて、きょとんとしてしまう。

「あいつらにちょっと話してたから、さっきの反応で俺が気になってる人だって速攻バレてさ。チャンスだから行け行けってなって……俺も、1回ちゃんと話したかったから声かけたんだ」
「……そうだったんだ」

派手な髪色で、関わることがないタイプの人だと勝手に思い込んでいたけれど、こうして話してみるとすごくしっかりした、同年代の普通の男子という感じがする。

切れ長の目からやや怖い印象を受けたものの、一部の見た目で性格を勝手にイメージして決めつけるのは間違いだった。

……勝手なイメージを抱かれるのが、当人にとってどういうものか身を持って知っているはずなのに、私自身も無意識にそうしてしまっていたことに気づく。

恥ずかしくなったあと、気を取り直して、彼をできるだけ真っ直ぐに見つめた。

「私……福原結仁です。星南(せいなん)の1年生」

ハッとした表情になった彼は、照れたように笑った。

「俺、バカだな。名乗りもしてなかった……。改めて……俺は高瀬(たかせ)樹。英朋(えいほう)の1年。よろしく、福原さん」
「こちらこそ。それで、その……いきなり付き合うとかはちょっとあれなんだけど……」

スマートフォンを取り出すと、意図がわかったのか、高瀬くんは嬉しそうに微笑んだ。