薄々そうじゃないかとは思っていたけれど、本当に、こんな街なかでいきなり言われるとは思っていなかった。
それに、そもそも私たちは、今が初対面と言っていいくらいのはずだ。
真っ先に浮かんだ言葉が、口から出ていた。
「……罰ゲーム……?」
後ろに控えている友達にけしかけられているような雰囲気だったし、ただのノリか罰ゲームくらいしか、いきなりこんなことを言われる理由はない気がする。
しかし、彼はぶんぶんと首を横に振った。
「いや、違う! 本気で!!」
大声で言う彼の耳が、少し赤くなっている。
口元が見えないので、もしかしたらマスクの下でほくそ笑んでいるのかもしれないけれど。
もしも本当で、勇気を出して言ってくれたのなら、罰ゲーム扱いしてスルーするのはとても失礼に思えた。
「あの」
「はい」
「ひとつ、聞いてもいいですか?」
「はい!」
ハキハキとした返事が返ってきて、まるで面談か何かでもしているような気分になる。
そう思ったのは、少し離れた位置に控えている3人も同じだったようで、「面接みてぇ」「だな」など頷き合っていた。
彼らのことはなるべく気にしないようにして、思い切って尋ねてみる。
「……なんで、付き合いたいと思うんですか?」
「えっ」
彼が固まる。
後ろの3人が「きちぃ」「圧迫面接だ」など言って笑いはじめ、いたたまれなくなってきた。
「おい、お前らうるさい」
「ごめんって」
4人は気心知れた仲のようで、イツキがしっしっと手を振って追い払うと、3人はそれ以上からかうことなく「カフェ行っとくわー」など言って、立ち去ったのだった。
「……ごめん。そっちの友達も。ちゃんと話したいんだけど、ちょっとだけいい?」
「あ、うん! どうぞ!」
栞が頷くのを確認した彼の視線が私へと向けられる。
「……わかった」
「ありがとう」