「……まだ終わらないでほしいよな」
「え?」
彼がポツリと呟いて、彼女がそれに振り向いた瞬間。
――夜空に咲く、大輪の花。
「……あ」
彼女はその音に思い出したかのように視線を戻し、既に花が散ってしまった夜空を再び見上げる。
「……もう!見逃しちゃったじゃん!」
「うるせぇよ。お前が集中してねぇからだろ」
「そんなことないよ。そっちが変なこと言うから」
「変なことって?」
「……よく聞こえなかったけど、多分あんたが言うんだから変なことだと思う」
「ハッ、んだよそれ。馬鹿にしてんだろ」
二人でくだらない喧嘩をしながら、その後も色鮮やかに花が咲き乱れる夜空に目を向ける。
最初はそうやってお互い悪態を吐いていたけれど、次第にその美しさに言葉を無くして見入ってしまう。