ピロン
もう慣れてしまった大きな通知音がなる。
スマホを確認するとずっと待っていた杏莉からのものだった。
安心と、少しの不安と、期待と。色々なものが混ざって少し速くて大きな心音を感じながらトーク画面を開く。
『もう優羽のこと嫌いになったから
てゆうかずっと嫌いだったから
もう連絡してこないで
まぁブロックするから意味無いけどね
さよなら』
そこに書かれていたのは紛れもない別れと拒絶の言葉だった。
嫌われていた?何時からだ?ずっとっていつ?中学に上がっても連絡をくれて、時々遊んでいたあの時から、杏莉は私のことが嫌いだったの?
聞きたいことは沢山あるのに、言葉は何も浮かばなくて。
ショックで泣くことすら出来ずにはたらかなくなった頭で考える。
何か返信しないと、でも、私のことが嫌いなら返信しても嫌な思いさせるだけなんじゃ。
どうしよう。聞きたいことは沢山あるし伝えたいことも沢山あるのに。
嫌われるのが、嫌がられるのが怖くて、これ以上拒絶されるのが怖くて、何も打てない、送れない。
頭が追いついて来たのか溢れ出した涙に視界が歪む。
画面が濡れてトーク画面も見えなくなる。
どうせならこのままこのメッセージを、時間を、事実を、流してくれればなんて思ったけれど。
どれだけたっても何も変わらない画面はいやでも事実を伝えてきて。
歪みが少し落ち着いた視界がお揃いで買ったイヤリングを捉えて、思い出してしまって。
その時からもう杏莉は私のことが嫌いだったのだろうか。
あの時の笑顔は、全て偽物だったの?
何もわからなくなったまま、溢れてくるそのままに涙を流していた。
その後数日しても私は結局返信することが出来なかった。
明らかに失恋したはずなのに杏莉への恋心を諦めることも、出来なかった。

『たとえ貴方が私のことを嫌っても、それでも私はずっと貴方を思い続ける』