「あれ、お母さん出かけるの?」
「うん。ちょっと昔の友達とね」
休日の朝、いつもより少し気合いの入ったメイク、服装でアクセサリーケースを見ているお母さんに声をかけ、ケースの中を覗く。
そこに、一際目を引く指輪が。
「この指輪綺麗だね」
「あぁ、それお父さんとの婚約指輪よ」
「へー、すごいね」
婚約指輪、か。
杏莉への思いに気づいてから婚約や結婚、恋やら愛やらにとても敏感になったように感じる。
今日本では同性婚なんて認められてなくて。私がこの指輪を貰える日が、いつか来るのだろうか、なんて考えているとお母さんが口を開く。
「確かにすごいわよね。でも私はこの指輪がたとえおもちゃの指輪でも、なかったとしても、お父さんと結婚してたと思うわ。
優羽もいつかそんな人に出会えるといいわね。」
なんて言いながらピアスを選ぶお母さんを尻目に考えるのは杏莉のこと。
今だったら、別に何もいらないから杏莉と一緒に居たいと思う。そこでふとお揃いで買ったイヤリングが思い浮かぶ。
あのイヤリングはなんとなく特別であの後すぐに目にはいるとこに飾ってあるけれど使ってはいなかった。
今は、まだ。友達としてお揃いで買ったイヤリングが限界だけれど。
いつか杏莉に指輪を渡せるようになりたいなんて叶うかもわからない未来を考える。
そういえば最近、杏莉からの連絡がない気がする。たまには私から、連絡してみようと思い自分の部屋に向かった。