息がしやすくなった。生きやすくなった。



友達と馬鹿やるのはさらに楽しくなったし、ゲームも楽しい。それでも受験勉強とのメリハリははっきりつくようになった。



成績が伸びるようになった。先生から褒められた。自分と偏差値の合っている学校の中ではいちばん自分のやりたいことができる、という理由から選んでいた志望校を、もう少しレベルの高いところに変えることができた。



学費もだいぶ安くなったし、やりたいことにもより近づいたし、このまま合格できれば何もかもが成功だといえる。



母さんがいつでも見られるようにと俺の部屋に置いてくれていた、父親との幼少期のアルバムは、もとあった押し入れへと戻した。これでまた、生きやすくなれ。



母さんが休みの土曜はゲームばかりしていたのに、勉強が中心になった。母さんの作ってくれるご飯が昔から好きだから、好きなゲームに好きなご飯という幸せだけで構成されていた日々を手放すのは、辛いところもある。



それでも受験の合格を祈って勉強し続けることができたのは、『変な奴』が息のしかたを教えてくれたから。



けれど思い返せばあれは、息のしかたそのものを教えてくれたというよりも、吐き方、そのあとに吸い方の手本を見せてくれたようなものではないか。



そんなふうに考えるようになっていた。