二年前に病気で突然死んだ父親の、形見のブレスレットが弾けた。青色のとんぼ玉が連なったものだった。その瞬間はやけにスローモーションに見えた。



俺は父親のことが大嫌いで、ただ、母さんに言われるがまま持っていただけだった──昔から、お父さんのとんぼ玉が好きでしょう。



幼い頃にしゃぼん玉で遊んでもらった記憶はあるけれど、それ以外では喧嘩ばかり。一緒にいてもとくに楽しいと思わなかった。だから形見も、俺なんかより母さんが持っていたほうが、と思った。それを母さんに強く却下されて、そういうものなのかと腑に落ちただけ。



そんな俺でも、二年経ったいまなら、あのひとの気持ちがわかるかもしれない。歩み寄ってみたい。そうして試しにはめてみようと思った。その次では弾け飛んでいた。



大嫌いだった。高校を決めるときにはもっと考えてから話せと言い、戦闘ゲームをしているときにはどの敵をマークするのか決断力を早く身につけろと言った。



父さんはゲームがものすごく下手で、試しにやらせたときに一瞬で全滅した。それくらいに不器用なひとからゲームにまで口を出されるとは思っていなくて、ひどくいらついたのを覚えている。



覚えていたけれど必死に探した。弾け飛んだ綺麗な青色を、部屋のすみずみまで。探したはずで、それでも一粒分だけが見つからなかった。



そのせいか昨夜はまったく眠りにつけず、欠伸を噛み殺しながらの授業を、いま。ようやっと終えたところ。



普段夜更かしなんて全然しないから、こういうまれにある眠れない日には昨晩をひどく憎むことになる。