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ピーンポーン
家の中にチャイムが鳴り響く。
俺はあの後、家に戻り寝てしまっていた。
誰か出るだろう、そう思い再び眠ろうとする。
ピーンポーン、ピーンポーン
誰も出ることなく、チャイムが鳴り響く。
あまりのうるささに体をおこし、玄関に向かってドアを開ける。
「楓!」
「おわっ!」
すると、小さな女の子が俺に抱きついてきた。
俺はその子の顔を見て息をのんだ。
「……さ、おり?」
「正解!」
小さい女の子の正体は二年前、亡くなってしまった沙織だったから。
「ど、うして?」
動揺しすぎて上手く言葉が口から出ない。
「何でか心当たりあるんじゃないかな?」
俺は考える。
本当は沙織は死んでいなくて……
そんなわけがない。
俺はお葬式での冷たい沙織の肌を触ったことを思い出す。
「……分からない」
俺が答えると、沙織はつまらなそうな顔をした。
「正解は楓が神社にお願いしたでしょ?それが叶ったの」
「う、嘘だ」
「ほんとうだよ」
叶わない願いが叶った。
沙織をじっと見る。
赤い着物を着て、中学生の姿をしている。
ということは……
「沙織は生き返ってないのか……?」
「そうだね。この姿みたら分かるでしょ?私の時は中学生から止まってる」
俺は目を伏せた。
沙織はこの世にはいないという現実にやっぱり目をそらしたかった。