昔、俺には“沙織”という幼馴染みが居た。
沙織は、元気で明るくて笑顔の絶えない人で、そんな彼女から告白をされたときは心底、驚かされた。
俺と沙織は恋人になった。
初めてのデートは夏、一緒にこの神社の花火大会に来た。
一緒に綿菓子食べて、金魚すくいして。
俺は金魚すくいは全くできなかったけど、沙織はとてもうまかったのを今でも覚えている。
そして、初めてのキスをした。
真っ赤に頬を染めている沙織が綺麗で可愛かった。
また、来年も来ようと約束した。
約束をしてから、二週間後。
沙織は亡くなった。
重い病気を患っていたらしい。
俺と花火大会に行った日。
あの日が沙織が自由に動ける最後の日だったそうだ。
そこから、突然の病状悪化が進み、亡くなってしまった。
沙織が学校に来てなくて、俺は心配した。
『大丈夫?』、そうメールをして返ってくるのは『元気だよ!』という沙織のメール。
本当は苦しんでいたのではないか?
本当は、本当は……。
俺は沙織のことに気づくことが出来なかった。