大事な人のお父さんとわかれた後、俺は目の前に広がる石段を一段ずつ上っていく。
普段、上るような木やコンクリートで出来た階段とは違い、表面がでこぼこしていた。
それに、一段の石の大きさが全て違うので、転けそうになりながらも俺は慎重に足を進めた。
どんどん上っていくと、石段の間から黄色く、茎の長いきのこが上へ上へとはえている。
俺はそのきのこが食べれることを知っていたし、踏まれたら可愛そうだと思った。
だけど、そのきのこからは『沢山の生きる』を感じ、そのままにしておく方がいいような気がした。
自然界で生き抜くのは相当しんどいだろう。
だから、その中で、命を絶やさず生き抜けるのはごくわずか。
俺もこれくらい、一生懸命生きないといけないのかもしれない。
今はこんなことを考えたくない気分だけど、考えてしまう。
そして、『生きる』を考えると同時に『死ぬ』ということも考えてしまう。
最後の階段を一段、上り終え、頂上についた。
頂上には、小さな神殿があった。
そして、神殿の隣には一つのベンチ。
俺はベンチに座り、指でなぞる。
昔、大事な人と花火を見たな。
思い出が蘇ってくる。