「すっげー、東山ん家マジででかいな」
「リアルお坊っちゃんじゃーん!」
土曜日になると我が家はいつになく賑わった。クラスの生徒たちを家に連れてくるだなんて今までに一度もなかったものだから、お母さんはびっくりしていた。
おばあちゃんにおいては感動のあまりに涙を拭っているほどで。
だだっ広くて殺風景だった僕の家の庭が、40人ほどのクラスメートで埋め尽くされている。
近くに家も建っていないから、気にせずに楽しんでもらってかまわないとお父さんからも許可をもらった。
家族の皆は、今までになかった僕の行動に驚きつつも、全面的に協力をしてくれた。
火が消えた花火を入れる用にせっせっとバケツを運んでいたら、突然白い手が伸びてくる。
「手伝うよ、東山くん」
耳障りの良いクリアボイス。沢多さんだ。
セーラー服ではなく、今度は紺色のワンピースを着ている彼女につい目を奪われた。
雰囲気が違う。大人っぽいなあ。
「あ、ありがとう」
「いいえ。家の人は大丈夫だった? こんなに大勢で押しかけて迷惑してない?」
「へ、平気だよ。むしろ大歓迎だって」
「本当? じゃあ、せめて綺麗にしていくからね。ゴミは残さないようにピッカピカにする!」
そんなに気を使わなくていいのに、沢多さんは律儀だ。
バケツを一緒に運んで、庭の中央に設置する。クラスの皆は、自分たちで買ってきたのだろう花火を中央に並べた。
その中には中野さんの姿も、そして加藤くんの姿もあった。
「俺線香花火やりてぇ」
「馬鹿! それは最後でしょ!」
「あー? 順番なんてなんだっていいだろ」
「東山くん、もう始めちゃって平気?」
皆が楽しそうでよかった。
うん、と頷くと、手持ち花火に点火剤がつけられる。
弾ける火花。
僕の家で花火をしているだなんて、今でも信じられないな。
「はい、東山くんの分」
縁側に座ってぼんやりと眺めていると、僕の目の前に手持ち花火が1本差し出された。
渡してくれたのは沢多さんだ。
「はは、僕は見てるだけでいいのに」
「私が東山くんと一緒に花火したいの」
「ぼ、僕と……?」
「そう。あっちに行かなくていいから、ここで2人でしようよ」
「う、うん……」
おずおずと受け取ると、沢多さんが持っている点火剤で2つ分の花火に火花が散った。
パチパチと弾ける火の玉は綺麗だった。
沢多さんは携帯で手もとの動画を撮っているようだった。そういうところは今時の女子らしいな、と笑っていたら、不意に僕の方にカメラが向けられてギョッとする。
「ぼ、僕なんかを撮っても面白くないって!」
「なんで? 君って結構ハンサムだと思うけど」
「ハッ、ハンサム!? どこがだよ!」
「あはは、すごく顔赤い。君には精悍さはないかもしれないけれど、清潔感がある文学男子って感じがして、兎に角ね、花火がすごく似合うよ」
「リアルお坊っちゃんじゃーん!」
土曜日になると我が家はいつになく賑わった。クラスの生徒たちを家に連れてくるだなんて今までに一度もなかったものだから、お母さんはびっくりしていた。
おばあちゃんにおいては感動のあまりに涙を拭っているほどで。
だだっ広くて殺風景だった僕の家の庭が、40人ほどのクラスメートで埋め尽くされている。
近くに家も建っていないから、気にせずに楽しんでもらってかまわないとお父さんからも許可をもらった。
家族の皆は、今までになかった僕の行動に驚きつつも、全面的に協力をしてくれた。
火が消えた花火を入れる用にせっせっとバケツを運んでいたら、突然白い手が伸びてくる。
「手伝うよ、東山くん」
耳障りの良いクリアボイス。沢多さんだ。
セーラー服ではなく、今度は紺色のワンピースを着ている彼女につい目を奪われた。
雰囲気が違う。大人っぽいなあ。
「あ、ありがとう」
「いいえ。家の人は大丈夫だった? こんなに大勢で押しかけて迷惑してない?」
「へ、平気だよ。むしろ大歓迎だって」
「本当? じゃあ、せめて綺麗にしていくからね。ゴミは残さないようにピッカピカにする!」
そんなに気を使わなくていいのに、沢多さんは律儀だ。
バケツを一緒に運んで、庭の中央に設置する。クラスの皆は、自分たちで買ってきたのだろう花火を中央に並べた。
その中には中野さんの姿も、そして加藤くんの姿もあった。
「俺線香花火やりてぇ」
「馬鹿! それは最後でしょ!」
「あー? 順番なんてなんだっていいだろ」
「東山くん、もう始めちゃって平気?」
皆が楽しそうでよかった。
うん、と頷くと、手持ち花火に点火剤がつけられる。
弾ける火花。
僕の家で花火をしているだなんて、今でも信じられないな。
「はい、東山くんの分」
縁側に座ってぼんやりと眺めていると、僕の目の前に手持ち花火が1本差し出された。
渡してくれたのは沢多さんだ。
「はは、僕は見てるだけでいいのに」
「私が東山くんと一緒に花火したいの」
「ぼ、僕と……?」
「そう。あっちに行かなくていいから、ここで2人でしようよ」
「う、うん……」
おずおずと受け取ると、沢多さんが持っている点火剤で2つ分の花火に火花が散った。
パチパチと弾ける火の玉は綺麗だった。
沢多さんは携帯で手もとの動画を撮っているようだった。そういうところは今時の女子らしいな、と笑っていたら、不意に僕の方にカメラが向けられてギョッとする。
「ぼ、僕なんかを撮っても面白くないって!」
「なんで? 君って結構ハンサムだと思うけど」
「ハッ、ハンサム!? どこがだよ!」
「あはは、すごく顔赤い。君には精悍さはないかもしれないけれど、清潔感がある文学男子って感じがして、兎に角ね、花火がすごく似合うよ」