あれ?
思ってたのと違った……!
しどろもどろになりながら、ひとつひとつに回答をする。僕の提案は思いの外好評だった。


「どっ、どうかな。中野さんも、加藤くんも」


いつもだったら、僕から彼女たちに声をかけることはしない。
僕から誘うなんて烏滸がましいかもしれないと思いながらも、勇気を振り絞った。


「ふーん。ま、いいんじゃない?」


中野さんは髪を弄りながらも提案にのってくれた。加藤くんの方は僕を一瞥すると、何も言わずに教室から出て行ってしまったのだった。





「東山くんの家って、そんなに大きいの?」


放課後、委員会の集まりが終わって沢多さんと昇降口を出る。
僕はずっと、彼女の隣を歩くことを躊躇っていた。
沢多さんが時折り、人から声をかけられるたびに萎縮してしまうけれど、それでも今は、ちゃんと隣を歩いていたいと思うようになった。


「大きいというか、土地が広い……? 農家なんだ、うちって」
「そうなんだ。いいなあ、うちはマンションだから、庭があるのって羨ましい」
「そうかな? 特にやることもないけれど」


一緒に駅まで歩くのは緊張する。
隣で沢多さんが着ているセーラー服が風に靡いている。


「もしかして、お昼のアレ、私のことを助けてくれた?」


風に巻き上げられる髪を押さえている沢多さん。
アレ……とは、花火をしようと提案したことだろうか。


「中野さんが、い、苛々してるように見えた、から、沢多さんも、困ってるように見えてっ。もしかしたら、毎日文化祭の準備ばかりで、ストレスが溜まっている人もいるのかもしれない、と思ったんだ」
「……そっか」


中野さんは沢多さんがいないとつまらないと言っていた。実行委員会は僕だけで参加する、と提案をするのも違うと思ったから。


「でも、よかった。中野さん、沢多さんとは仲がいいから、文化祭の期間中はあんまり遊べなくて残念だっただろうし」


大通りに差し掛かり、横断歩道前で足を止める。
目の前をトラックが横切っていった。


「そんなに仲がいいわけじゃないよ」


ブォォォォ……、走行音で一部は聞き取れなかったけれど、沢多さんが何を言っているのかはちゃんと聞こえてきた。

──え?
仲が、いいわけではない?


「瑛里香は私のことを、むしろ嫌ってる」


嫌っている?

そんなことがあるのだろうか。だって、ほぼ毎日一緒にいるイメージだった。仲睦まじそうに会話をしている様子も何度も見かけたことがある分、耳を疑ってしまった。


「なんで……そう思うの?」


あまりにショッキングな内容だったのだ。
だって、どうみても仲良しじゃないか。


「東山くんの知らないところではね、いろいろあるんだよ。いつからか、私だけがクラスから浮くようになった。私だけが空気みたいな存在になってた」
「……そ、んなことは、」


──ないじゃないか。
信頼されているじゃないか。
文化祭の準備をしている時も、皆から頼られて、それで。


「あり得ないって、君は思うだろうね。私は"人気者"だって。でもそれは、ただ先生たちに怪しまれないように、うわべだけはそういう風にしているだけだから」