「僕は、言ったはずだよ。どんなことでも知りたいって。1人になるのが怖いのなら、ぼっ、僕がいるっ…! みっ、み、皆が沢多さんのことをどう思ったって、僕だけは気にしないよ。1人ぼっちが2人になったら、ふっ、2人ぼっちでそれもそれでいいじゃないか!」


途中からなんて言っているのかが意味不明になった。
顔を真っ赤にしながら、慣れないことを口にする。視線が宙を彷徨い、ようやく沢多さんの目へと戻ってくるとまた変な汗をかいた。


「東山くんって不器用だけど、まっすぐで素敵だね」
「えっ!?」
「2人ぼっちか……それなんかいいな」


街の光を浴びたシルクのスカートが揺れる。
ふわり、と風に乗るたび、沢多さんが空へと持っていかれそうなくらいに、幻想的だった。


「僕、沢多さんは、人にいつも囲まれてて、それこそクラスの中心的グループに属してて、すごいなあって思ってたんだ」
「あはは、そうだったの? 東山くんは私なんて興味ないって思ってたよ」
「そっ、そんなことは……ないよ。ずっと、憧れてたんだ。僕は君みたいにはなれないから、余計に」
「……そっか」
「で、でもねっ、もうそんな風に決めつけたりしない。疲れたら、休んでいいんだ。いい子でいる必要はきっとなくて……だから、そのっ、怖かったら僕がいるから、休んでいいんだよ、沢多さん」


また、油断すると泣いてしまうような気がした。
君は気づいていないと思うけれど、僕は必死なんだよ。死ぬことを考えてほしくなくて、ちょっとでも心を軽くしてあげたくて、しょうがない。
また"大好き"が聞けなくてもいいから。その相手が今度は加藤くんになってしまってもいいから、とにかく沢多さんに生きていてほしい。

辿々しく言葉を並べると、沢多さんの瞳が一度、大きく揺れた。


「もう。大袈裟、だなあ」


沢多さんは曖昧に笑って、背中を向けてしまう。
誤魔化しているのかもしれない。
余計なことを言ってしまったかな、と僕も黙って歩いた。


「私、ね」
「うん」
「たまに、全部を投げ出したくなる時があるの」


それで、と小さく息を吐いた沢多さんは、


「──時々無性に、消えたくなるんだ」


まるで光を失った目をして、悲しそうに笑っていた。