「ホストクラブやってまぁーす!」
「イケメンいるよー! 来てくださーい!」

──10月14日。
天気、晴れ。ビラを片手に校内を歩く人々。他校生、大人たち、卒業生、中学生、うちの生徒ではない人達が校舎の中にいる光景は新鮮だ。文化祭当日の学校はまるでお祭りの日のような賑わいを見せていた。


「東山くん、新規2名様ね」
「はっ、はいっ…!」
「東山くん! 追加でもう2名様!」
「りょ、了解しました!」


ホストクラブはありがたいことに人気のようで、次から次へとお客さんがやってきた。受付担当をしている僕はてんてこまいだ。

あとで売上を計算しなくてはならないから、記録業務は重要だったりする。僕はホスト役なんて到底できないし、そうなると必然的に事務方に徹することになるのだけれど。


「東山ー、スーパーメロンソーダ1本入ったから」
「5卓、スーパメロン1本。了解」
「東山くん、こっちはサイダータワーが入りましたー! 姫ぇー、ありがとうー!」
「はっ、はい! 3卓にタワー、っと」


慌てて伝票にメニューを追加する。
向こうの席ではシャンパンタワーというものに見立てた、サイダータワーが派手にセッティングされている。

ホストクラブがどういうものかは分からないけれど、皆、盛り上がってるなあ。


「──東山くんはホスト、しないんだ」


ようやく手が空いてホッと一息ついていたら、横から急に声をかけられてびっくりする。
沢多さんだ。


「ぼ、僕には到底無理だよ」
「はは。たしかに、東山くんはホストって感じじゃないね」
「でしょ……? あ、ごめん、そろそろ総合受付の当番の時間帯だったね。しばらく交代してもらうように頼んでくる」


クラスTシャツの下に、学校指定のスカートを履いている少女がいる。
今日は文化祭という特別な日だからか、尚更彼女と会話をするのはドキドキしてしまうな。

きっと、沢多さんは中野さんや加藤くんたちと校内を回るのだろうだから、たった1時間だけだとしても、彼女と一緒に受付業務ができることに幸福を感じてしまう。


「東山くんは一生懸命だね」
「え?」
「受付の仕事なんて誰も引き受けたがらないよ。だってせっかくの文化祭だもん。皆主役になりたいし、他のクラスの展示だって見て回りたいって思うところなのに」
「……そう、なのかな?」
「うん、東山くんはやっぱりすごいね」


──すごい、だなんてそんな言葉をくれるのは沢多さんくらいだ。

照れ臭い。嬉しい。恥ずかしい。
沢多さんは僕のことを過大評価しすぎだと思う。優しい人だな。いい人だな。だから彼女は皆の人気者なんだ。憧れの存在なんだ。