音楽室に行かなくなって当たり前のことに気づく。私たちは用事がなければ、二人きりにならない。教室からテニス部に行くときに二人で行くのは、クラスのテニス部員が私たち二人だけだからで、もし仮にほかにも部員がいたとしたら全員でぞろぞろと部活に向かうだろう。
だから、わざわざ二人だけの打ち上げなんてしない。クラスのみんなで打ち上げをしたら響也の中で、合唱コンクールは終わりだ。そもそも、私たちは二人だけで遊びに行ったことはない。土日に遊びに行く時は、クラスか生徒会かテニス関係の仲間たちみんなで遊びに行く。
二人の時にしかできないような話は当然ある。二人きりの時間は今までにそれなりにあった。ただ、それはお互いの意思によって生まれたものではなく、たまたま同じ目的地であるテニススクールに向かうという業務上の理由で生まれたボーナスタイムである。
流れ星に三回お願いをするなんて非現実的だと分かっている。世界には70億人以上の人間がいるから、祈るたびいちいち恋を叶えていたら神様仏様が飽和してしまう。それでも、いつか響也の恋人になりたいと星に願った。そして、届かない祈りを捧げる夜をこれからも私はきっと繰り返す。
いつか響也がスマホで私に見せた恋人の写真は、ツーショットじゃなくて可愛い女の子が単体で写っている写真だった。恋人がいるって話がドッキリだったらいいのに。実はもう別れてましたってオチだったらいいのに。響也が実は私のことを好きだったらいいのに。
もっと早く出会いたかった。もっと早く仲良くなりたかった。同じ中学に通いたかった。同じ小学校に通いたかった。幼馴染になりたかった。生まれたときからずっと一緒の相手には恋愛感情がわきにくいと聞いたことがある。こんなに辛いなら、いっそ好きにならなければよかった。
たらればはどこまで行ってもたらればでしかない。どんなに願っても、同じ日常を繰り返す。それでも、恋を自覚する前はすべてが輝いていた日常だからそれを壊す勇気なんてない。
そんなある日の部活の後、顧問に男子女子それぞれのキャプテンは残れと言われた。珍しいことに、三人だけでちょっとしたミーティングが行われた。待たせるのは申し訳ないと言うことで、ほかの部員には先に帰ってもらっていた。顧問が手続きのために、コートを離れた。
広いコートに二人きり。何かを変えるなら、今しかないんじゃないかと思った。チャンスの女神様には前髪しかないとどこかで聞いたことがある。チャンスの女神様が、今だといった気がした。
奇跡は自分で起こすものだと、ほかでもない響也が言ったから。十七歳の私は今日、人生最大の賭けをする。
「ねえ、勝負しようよ。久々に」
もし、響也に勝ったら告白する。
だから、わざわざ二人だけの打ち上げなんてしない。クラスのみんなで打ち上げをしたら響也の中で、合唱コンクールは終わりだ。そもそも、私たちは二人だけで遊びに行ったことはない。土日に遊びに行く時は、クラスか生徒会かテニス関係の仲間たちみんなで遊びに行く。
二人の時にしかできないような話は当然ある。二人きりの時間は今までにそれなりにあった。ただ、それはお互いの意思によって生まれたものではなく、たまたま同じ目的地であるテニススクールに向かうという業務上の理由で生まれたボーナスタイムである。
流れ星に三回お願いをするなんて非現実的だと分かっている。世界には70億人以上の人間がいるから、祈るたびいちいち恋を叶えていたら神様仏様が飽和してしまう。それでも、いつか響也の恋人になりたいと星に願った。そして、届かない祈りを捧げる夜をこれからも私はきっと繰り返す。
いつか響也がスマホで私に見せた恋人の写真は、ツーショットじゃなくて可愛い女の子が単体で写っている写真だった。恋人がいるって話がドッキリだったらいいのに。実はもう別れてましたってオチだったらいいのに。響也が実は私のことを好きだったらいいのに。
もっと早く出会いたかった。もっと早く仲良くなりたかった。同じ中学に通いたかった。同じ小学校に通いたかった。幼馴染になりたかった。生まれたときからずっと一緒の相手には恋愛感情がわきにくいと聞いたことがある。こんなに辛いなら、いっそ好きにならなければよかった。
たらればはどこまで行ってもたらればでしかない。どんなに願っても、同じ日常を繰り返す。それでも、恋を自覚する前はすべてが輝いていた日常だからそれを壊す勇気なんてない。
そんなある日の部活の後、顧問に男子女子それぞれのキャプテンは残れと言われた。珍しいことに、三人だけでちょっとしたミーティングが行われた。待たせるのは申し訳ないと言うことで、ほかの部員には先に帰ってもらっていた。顧問が手続きのために、コートを離れた。
広いコートに二人きり。何かを変えるなら、今しかないんじゃないかと思った。チャンスの女神様には前髪しかないとどこかで聞いたことがある。チャンスの女神様が、今だといった気がした。
奇跡は自分で起こすものだと、ほかでもない響也が言ったから。十七歳の私は今日、人生最大の賭けをする。
「ねえ、勝負しようよ。久々に」
もし、響也に勝ったら告白する。