先生に見つかる前に、早く屋上に行かなければ。けれども、緊張して足がすくんだ。それでも、手を繋いで廊下を走って階段を駆け上がる。最後の踊り場で息切れした。
踊り場には大きな鏡がある。その鏡が僕らを映した。アクセサリーで着飾った僕は、多少ロックな自分に近づけたと思う。姫花はジャケットを羽織って女性的な体を隠している。姫花の顔は整っているため、男性的な服装をしていると「かっこいい」と思えた。
「怖い?」
「そりゃ、怖いよ。こんな大それたこと」
僕だって怖い。でも、僕らの不安を吹き飛ばすために僕は姫花の手を握り、指を絡めた。姫花が人差し指にはめてくれた指輪の感触をより強く感じた。
「人差し指の指輪って大願成就って意味があるんだよ。だから、大丈夫だ」
自分に言い聞かせるように僕は呟いた。
「さすが、栄介は何でも知ってるね。ボクの自慢の恋人だよ」
不安で俯いていた姫花の表情が柔らかくなる。
「二人で世界を壊そう」
姫花を抑圧する世界に向けて中指を立ててやるんだ。誰かが来る前に、僕らは残りの階段を駆け上がり、立ち入り禁止の屋上に侵入した。
屋上からは、説明会を終えて体育館からぞろぞろと出てくる中学生の行列が見えた。ジャストタイミング。
怖い物なんてないと何度も息巻きながら、結局僕らは変化を恐れている。それでいて戻れなくなることを望んでいる。登校禁止日を無視、私服での校内立ち入り、アクセサリー着用、教室でピアス貫通、屋上の鍵ならびに学校の備品の無断使用、立ち入り禁止の屋上に侵入。既に校則違反の数え役満だ。
さあ、世界を壊そう!
踊り場には大きな鏡がある。その鏡が僕らを映した。アクセサリーで着飾った僕は、多少ロックな自分に近づけたと思う。姫花はジャケットを羽織って女性的な体を隠している。姫花の顔は整っているため、男性的な服装をしていると「かっこいい」と思えた。
「怖い?」
「そりゃ、怖いよ。こんな大それたこと」
僕だって怖い。でも、僕らの不安を吹き飛ばすために僕は姫花の手を握り、指を絡めた。姫花が人差し指にはめてくれた指輪の感触をより強く感じた。
「人差し指の指輪って大願成就って意味があるんだよ。だから、大丈夫だ」
自分に言い聞かせるように僕は呟いた。
「さすが、栄介は何でも知ってるね。ボクの自慢の恋人だよ」
不安で俯いていた姫花の表情が柔らかくなる。
「二人で世界を壊そう」
姫花を抑圧する世界に向けて中指を立ててやるんだ。誰かが来る前に、僕らは残りの階段を駆け上がり、立ち入り禁止の屋上に侵入した。
屋上からは、説明会を終えて体育館からぞろぞろと出てくる中学生の行列が見えた。ジャストタイミング。
怖い物なんてないと何度も息巻きながら、結局僕らは変化を恐れている。それでいて戻れなくなることを望んでいる。登校禁止日を無視、私服での校内立ち入り、アクセサリー着用、教室でピアス貫通、屋上の鍵ならびに学校の備品の無断使用、立ち入り禁止の屋上に侵入。既に校則違反の数え役満だ。
さあ、世界を壊そう!