まるで一本の映画のハイライトのように駆け巡る……私しか知らない秘密の話……
 日記には書いていない、忘れたくなかった今までの人生……

 突然眩しい光に包まれた後、固く閉じていた目を開くと……
 目の前は別の景色だった。

「聞いていただきありがとうございました〜」

 パチパチパチパチパチパチパチパチ……

 雲一つない青空と芝生の濃い緑の中、公園の小さな丘に置かれたキーボードの前で自然と大きな拍手が起こっている。

 その拍手を受ける、弾き語りをしていたアーティスト……
 40代位だと思われる女性アーティストは深くお辞儀をした後にこう続けた。

「実は私事ですが……以前…………赤ちゃんが生まれる前に流産してしまったことがありまして……」

「もし子供ができたら……今まで自分が作った曲を聞かせたいなと思っていて……」

「自作曲のオルゴールCDを、お腹の中にいる頃から聞かせたりしていたんですが……色々あって結局、駄目でした」

「出来ることなら将来私がピアノを弾いて、子供が歌って……私が作った曲や色んな曲を一緒に歌いたかったんですが……」

「いつかは叶うと思っていた夢ですが……色々あって、もう子供は産めません」

「だから自分の歌が子供だと思ってます!」

『あなた』という曲とその話を聞いて、いつの間にか涙が流れていた。

「色々難しい時代で、世の中は暗くなりがちですが……知らない場所で支えてくれる誰かがいるから、生きていけるんだと思います」

「最後の曲は、今まで応援して下さったみなさんがいたから作れました」

「ちなみにデビュー曲は、ある曲を聞いて沸いたイメージから作りました」

「作曲の知識もなく手探りで作ったというその曲が……本格的に音楽活動をしようと思うきっかけになりました」

「私のつたない歌を最後まで聞いていただき、本当にありがとうございました〜」

 私は空を見上げて全てに気付いた……

 時を越えて届いた全ての謎に。


「ありがとう……先輩……私の曲、覚えててくれて……」

 そして送別会の日に偶然テレビで放送していた、アニメ映画のエンディング曲……
 本物の先輩が作ったその曲に救われた時のことを思い出した。

「助けてくれてありがとう……私も、忘れないよ……」

 そして『あなた』という曲を聞いて思い出した。
 悠希くんが見せてくれた『あなた』というネット小説に書いてあった最後の言葉を……

 最後の一行に書いてあったその言葉を……
 今まで出会った色々な人にも届けられなかったその言葉を、せめて彼にだけはどうしても伝えなければと強く思った。

 50年後の約束なんて有り得ない。

「ずっと待っていたのに……」と消える人生かもしれない。

 でもせめてあの言葉を残そう。
 あの言葉を最後に伝えよう。

 もしも会えなくても、彼と出会って書き始めた日記の中に……
 届かないかもしれないけれど私らしく暗号にして、最後の日記の一番最後に。

 私はこれまでの経験や今まで見た色々なもの、聞いた歌や言葉のおかげで気付くことができた。

 子供が生まれたことがどれだけ奇跡的なことか……
 もう大きくなったのでつけることが少なくなってきた子育て日記の大変だった出来事がどれだけ愛おしいことなのか。

 過去を(さかのぼ)った中で気付いた、
 たくさんの宝物。

今はつらくても、
消えてしまいたい瞬間があっても、
そばにいられなくても、
巡り巡って誰かの希望になれるかもしれないということを……

世界中に色んな人がいて、
どんなに思いや言葉がすれ違っても、
私達の空は一つに繋がっているということを……


「……絶対に諦めない…… 」

「……絶対に……忘れない」

 私はもう一度、空を見上げて誓った。





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『最後の後書き』

 追憶編の最終話まで読んでいただきありがとうございました。
 話の流れ上、後書きと一緒の最終話になることをお許し下さい。

 この小説の『最後の日記編』は、ある俳優さんの一言をきっかけに書き始めましたが、投稿し終わってしばらく経った頃……小説を読んだ方から沢山の温かい言葉をいただき、自分でも書くと思っていなかった『追憶編』を書こうというパワーをもらいました。

 そして、昔作った『あなた』という曲に歌詞があったことや色々な事を思い出しました。

 この小説の中に歌詞が出てくる歌は全て、昔自分で作詞・作曲した歌ですが、自分の曲を誰かに歌ってもらいたいというのが私の夢でした。

『あなた』は歌入りの音源が携帯で作成したデモテープのようなものしか残っていないため、結局サイトにアップするのをやめてしまった曲です。
 久し振りに聞いてみて、不思議とこの小説に合っている気がしたので取り入れた次第で後書きの最後に歌詞を載せています。

 ちなみに本編に敢えて書けなかった裏設定ですが……

 最終話に出てきたように日記は一つではなく、娘が生まれてからの『子育て日記』もあるのですが、家族への最後のメッセージは全部そこに書いています。
 だから日記の隠しページ以外の全てを知っていた孫の悠希は、あの紙袋を渡しに行ったんだと思います。

 実は12月1日は、『最後の日記…』本編の中で日記を書き始めた日……
 そして強い願いの先に生まれた二人(孫の悠希とクマの優希)の誕生日であり、(クマの明希)が消えてしまう時に力を少し受け継いだ(クマの優希)が「約束の日」で日記と一緒にカバンにしまわれて、最終的に仏壇に置かれていたから全てを知ることができたという裏設定もあります。

 ちなみに11月1日は、この小説を投稿し始めた「小説の誕生日」でもあり(追憶編は1月7日)、『最後の日記編』最終話を読んだ後にプロローグに戻ると、冒頭の言葉の本当の意味が分かります。

 私は、この小説を書いたのは何かの運命のような気がしています。
 新たに出会った人が登場人物と同じ名前や名字だったり、小説に書いたことと同じことを目にしたり……

 全ては偶然ではなく必然だった気がしています。
 なんだか書いていて、貰ったバトンを渡さなければという不思議な感じがしました。

 シュチュエーションは違いますが、全てが小説を書くヒントになっていました。
 あくまでも夢を基にしたフィクションですが……

 最後になりますが、冒頭でお話しした『あなた』という歌の歌詞を書いて終わりにしようと思います。

 自己紹介欄URL(サウンド…の方)からデモテープが聞けるのですが、歌が下手なため小説に出てきたシンガーソングライターのようにはいかないけれど……
 主人公達に置き換えたり、歌詞に出てくる『あなた』に自分が一番会いたい人を思い浮かべながら読んで(聞いて)もらえたら嬉しいです。

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『あなた』
1、
眠い目をこすりながら電話をくれるあなた
なんでこんなにも愛してくれるの?
なんでこんなに愛してるの?
あなたのことを想うだけで涙が出るんだよ
切ない時って本当に胸が痛くなるんだね

あなたが教えてくれた
私がここにいること
だから私は生きていたい
あなたの隣でずっと

叶わないと分かってても
願いたくなってしまうよ
あなたはきっと微笑みながら
あの場所で待ってる

2、
もしも願いが叶うなら
逢えるように祈るよ
それはあなたに似た小さな光
それが私の夢だから
たとえ未来と引き換えても
守っていきたい
臆病な私だけれどそんな生命(いのち)
いつか出会えるといいな

もしもそれが無理ならば永遠の歌を作ろう
誰かの心に残り続けるように
たくさんの光注いで

あなたに出会えたことが最高の奇跡だから
いつかあなたの心の中で笑っていれるように

あなたが教えてくれた
私がここにいること
だから私は生きていたい
あなたの隣でずっと

たとえ会えなくなっても
あの日のまま想ってるから
あなたはきっと微笑みながら
あの場所で待ってる
そんな未来が続くことを
いつまでも信じていたいの

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 追憶編の最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

 この小説を読んで下さった『あなた』も、誰かの人生に幸せを与えるかもしれない大切な存在の一人です。