濡れた服の向こうから、再び体温が伝わってきた。

「………………」

恥ずかしながら告白すると、女の子に抱きしめられたのは、生まれて初めてのことだった。どうしたらいいのかわからない。なんかドキドキしてきた。少しだけ考えて、俺はおずおずと、フェリスの背を撫でた。フェリスの背中は、ほっそりと、小さかった。

静かな夜だ。

そこで突然声をかけられたものだから、思わず身体が飛び跳ねた。

「ソラ! フェリス! イタ!」

ミュウ。そして、

「ソラ、いつまで外にいるの? さっさと戻って……」

リュカの声だった。

「あなたたち、いったい何をしているの!?」

「な、なにって、ほら、だって、寒いから……!」

俺は慌てて背中から手を放したが、フェリスはますます強く俺の胸元に顔をうずめてきた。

「お、おい……」

フェリスは俺の胸から首筋に、濡れた顔を滑らせる。そうして俺の耳元にくちびるを寄せて、囁いた。

「今の私の顔を……リュカには見られたくないんだ……」

「……わかったよ」

振り向くと、リュカがこちらをじっと睨んでいる。

「そうか、それはそれは寒いんでしょうね。私の炎で温めてあげてもいいのよ」

「あ、あはは……それはカンベンかな……」

結局フェリスの涙が乾くまで、俺はリュカに睨み続けられた。

「ソラ! フェリス! ハグ! ハグ!」

ミュウが囃し立てる。リュカの眼力がますます鋭くなる。ちょっとこれは、竜王のときよりも怖いかもしれない。