「お前が差し出すものだけは……なぜか素直に受け取れてしまうんだ……」

「そういう経験、ないのか?」

「ない……私は生まれて今まで、木の実ひとつ誰かから受け取ったことはない……命乞いに差し出されたものも、すべて蹴散らしてきた……」

そう言って、またカレーをひとくち食べた。

「お前のこのカレーは……どうあっても捨てたくない……どうして……だろうな……」

フェリスの青い瞳から、つうっ、と涙が流れた。

「本当に……わからないんだ……」

涙は次々と溢れて来た。フェリスはしゃくり上げながらも、カレーを口に運んでいく。

「どうした!? やっぱり辛かったのか!?」

「ああ……そうだ……」

そう答えて、フェリスは皿とスプーンを置いた。カレーを食べ終えたフェリスに、俺はハンカチを渡す。フェリスは涙を拭って、それから口元を拭いた。

それでも涙は止まらない。

「そうだ……辛いんだ……」

フェリスはそう言って、俺の胸元に顔をうずめた。

「カレーが辛いから……きっとこうなってるんだ……胸が熱くて……」

服が涙に濡れて、夜風に冷えていく。

「溶けて……しまいそうなんだ……」

「悪い、今度からは甘口で作るから!」

「いやだ……あの味がいい……」

フェリスは俺の背中に手を回した。

「え、あの、ちょっ」

「しばらく……こうして……いさせてくれ……」