俺はフェリスの分のカレーを用意して、洞窟の外に出た。フェリスは、外にある岩に座っていた。夜風が吹いている。

「冷えないか?」

「ああ、慣れている」

フェリスは、ぶっきらぼうに答えた。

今にも光が降ってきそうな、満天の星空だ。

「カレー食うか?」

俺は岩に座っているフェリスの、小さな背中に話しかけた。カレー皿からは、湯気が立ち昇っている。

「そんな食料は、この森のどこで採れるんだ? 見たこともない」

こちらを振り向いたフェリスが、不思議そうに小首を傾げる。

「俺が作ったんだよ。料理ってやつだ」

「お前はいろんなことができるんだな」

「そうでもないさ。さあ、食べて」

フェリスはおずおずと皿を受け取った。

「これで食べるんだ」

俺はカレーをスプーンで掬って、フェリスの口へと運んだ。

「んん……」

フェリスはゆっくりとカレーを味わっている様子だった。

「美味い。少しピリピリして、でもそれが気持ち良い」

そう言って、俺の手からスプーンをもぎ取った。

「自分で食べられる」

「そうだよな、悪い悪い」

俺は熱心にカレーを食べているフェリスの横に座った。するとフェリスは、スプーンの先を皿の端に置いた。

「どうしてだろうな……本当に不思議だ……」

フェリスは、じっとカレー皿に眼を落している。