俺は逃げるように、台所へと走った。

今日の料理はカレーだ。小麦粉がなくても、野菜とスパイスが揃えば、やり方次第でそれなりのカレーを作ることができる。米に似たイネ科っぽい植物も見つけたし、最近の食生活はとても充実しているのだ。

「ソラ」

料理中に、突然背後から呼びかけられた。

「びっくりしたよ、フェリスか。どうした?」

「少し外の風に当たってくる」

「オーケー、行っといで」

思えば、彼女はずっと外で暮らしてきたのだ。リュカはすぐに慣れたけれど、一匹狼だったフェリスは、屋内という空間に違和感を覚えているのかもしれない。

カレーができあがっても、フェリスは帰ってこなかった。

「いただきます」

リュカとミュウと一緒に、カレーを食べる。

「これは美味いわ!」

「カレー! オイシイ! オカワリ!」

「はいはい」

俺はふたりのおかわりをよそってやって、自分の分をささっと食べ終えた。我ながら上出来だ。フェリスもお腹を空かしている頃だろう。

「どこへ行くの?」

「フェリスにカレーを持って行こうと思ってさ」

「ふん、フェリスね。いいわ。行ってらっしゃい」

リュカは不満そうな様子だったが、俺を止めはしなかった。

「さっさと行って、さっさと帰って来るのよ」

「了解」