気がつくと、俺は緑色のコケの上に倒れ伏していた。顔を上げると、森の中だ。鳥の鳴き声があちこちからする。
ハイキングなんかで行ったりする、あの明るい雰囲気はみじんもない。異様に薄暗く、葉が生い茂り、道なんかどこにもない。あちこちで、動物が立てるらしいガサガサいう音が、俺を不安にさせた。
「ここが……悪魔の森……?」
この状況から、いったいどうすれば良いというのだろう。木の根でもかじって生き延びるのだろうか。勝手に召喚しておいて、勝手に追放だなんて、めちゃくちゃだ。なんで俺だけが、こんな目に遭わなければならないんだ――。
突然の物音に、思わず身をすくめた。
鳥が一斉に羽ばたく音だ。
何十羽も――まるで何かを予感したかのように飛び去っていく。
――ビュウウウ……ン
大きな影が、上空をよぎった。
何かが、来る。
俺は腐った巨大な倒木に、身を隠した。
グルーエルの言葉が、脳裏にこだまする。
『魔物に喰われて死ぬのが妥当だろう』
冷や汗が流れる。
――ドサッ
何かが地面に降り立った。