「………………ぐえっ!」

首を竜王に掴まれて、捩じ切らんばかりに逸らされていた。

「なんだよリュカ!」

竜王は、今はリュカと名乗っているらしい。

「私のときもそうだったけど、何をまじまじと眺めてるのよ! 駄目! よくわからないけど、そういうのは駄目!」

「いや、ちょっと驚いちゃって、その……」

「さっさと狼王の服を作って!」

ソラは私に背を向けて、まだ溶け残っている氷塊に手のひらを向けた。

すると氷塊が奇妙に引き歪み、捻じくれて、あっという間に、リュカが身に着けているようなものへと変化した。服――と、竜王は言っていた。ソラやリュカと同じように、これを身に着ける、というわけか。

私は後ろ手に渡された服を、素直に受け取った。

「………………」

幼い頃を振り返っても、私は木の実ひとつ、誰かから与えられたことはない。我が身ひとつで生きてきた。

――この、服、というもの。ソラが私のためだけに作ったもの。

それを私は何の疑問も持たずに、素直に受け取った。

木の実ひとつ受け取ることがなかった私が、だ。

このちっぽけなひとりの人間によって、私の何かが作り変えられたのだ。

服を抱く私の細い腕が、震えていた。

「私は……お前に……何か言わなければならないんじゃないか……?」

そんな気がした。ソラは答える。