竜王リュカはその巨躯で大きく跳躍し、鋭い爪を狼王に突き立てた。慌てて避難するミュウ。憎しみを瞳に宿す狼王。嵐を巻き起こすほどの竜王リュカの呼気。そして放たれるのは――。



――グルルルルルルルルオオオオオオオ!!



ごうっ、と熱風が吹いて、俺は思わず顔を覆った。

灼熱の炎が、氷塊を蒸発させ、木々を炭化させ――狼王の白い毛皮を灼いた。



 ――ウオオオオオオオオオオオオオオン!!



力を失った狼王は、融けた氷の刃と共に、木の上の足場から地上へと落下した。

決着が――ついた。

俺は倒れ伏した狼王へと駆け寄った。

リュカは背後へと回って、俺たちを見下ろしている。木の上から氷が溶け落ち、焼け倒れた木々の上で蒸発する。狼王は瀕死の状態でありながらも、ギラギラと輝く瞳で、俺を睨めつけた。

「……すべてはお前の差し金だったのか……脆弱な人間だと思って放っておいたが……先にお前を殺すべきだった……」

悔しげに、牙を見せて唸った。

「………………」





*  *  *



竜王に敗北した。

いや、竜王と人間に負けたのだ。

負けるはずのない戦いに負けた。

悔しくて仕方がない。

秩序の体現者たる獄炎竜リンドヴルムは、自分のことをけして許さないだろう。

たとえこのまま首を落されても、私は首だけであの人間の頭を噛み砕いてやる。