「勝機があるとすれば、そこだな」

俺が準備をしているうちに、リュカが着換えてきた。

「今度は必ず勝つ! 私ひとりじゃなくて、ソラたちと力を合わせて! 摂理と秩序のためなら、どんな手を使っても構わないわ!」

気合十分といった感じだ。リュカは家の外に出ると、竜王の姿に戻った。メキメキと木々が倒れ、巨躯がその姿を現す。

「よし、行こう」

木々をへし折って歩く竜王リュカのあとを、俺はついていく。竜王リュカの大きな背中の向こうから、陽が射している。

「………………」

狼王と戦おうと思えば、あいつの縄張りに入りさえすればいい。戦いの気配を察知したのか、魔物の気配はほとんどなく、森は静まり返っていた。

「そろそろ……あいつの縄張りね……」

竜王リュカが呟いたその瞬間――まるで身を刺すような殺気が身体を貫いた。ミュウが震えあがっている。

「縄張りを二度破られたんだ、奴の怒りもひとしおだろうよ……」

ついに狼王が、その巨大な姿を現した。まるで大気を突き刺すように、銀色の体毛を逆立て、低く唸り声を上げている――その唸りが、言葉となった。

「私の世界を侵すのが、よほど好きらしいな……」

ピシッと音がしたかと思うと、その口には巨大な刃が咥えられていた。奴の怒りは、接近戦へと気持ちを駆り立てたらしい。



戦端が――開かれた。



――ウオオオオオオオオオオオオオオン!!