「そうだ。出口の無い、この世の果てだ」

グルーエルの言葉と共に、濁ったガラス玉が輝いた。

「…………!」

その瞬間、俺はトラックに轢かれそうになった、あの衝撃を、もういちど味わった。





 *  *  *





「今のは、いったい……?」

【聖女】である野々村舞が尋ねると、グルーエルはフンと鼻を鳴らした。

「転移水晶だ。〈悪魔の森〉へ転移させた」

「〈悪魔の森〉7?」

「そうだ。生きて帰る者はいない、この世の果てだ。無能を捨てるにはちょうど良い。この美しい謁見の間をけがすのは、はばかられる故、そうしたまでだ」

「そんな……」

舞は思わず口元を押さえた。

「役立たずなら、いいんじゃね、それで」

【破壊神】山本寛治は、どうでも良さそうに自分のステータスを眺めている。

「初対面で感情移入しすぎっしょ、ウケるわ」

【魔女】田中奈々は鼻で笑った。

「役立たずは、ああなるということか。ここはそういう世界……」

【勇者】佐藤明は口を引き結んで、自らの運命を受け入れる。転移水晶から王へと目を向けたとき、追放された空のことなどは、意識の片隅にも残っていなかった。