「………………」

リュカには、吐き出される灼熱の炎の強力な中距離攻撃、そして短時間の浮遊からの滑空を利用した、鋭い爪の近接攻撃がある。更に硬い鱗は、高い防御力を誇っている。

しかしながら。

狼王はリュカほどの攻撃力や防御力はないものの、スピードは確かに上回っていた。そして問題はスピードだけではない。昨日リュカを瀕死に追い込んだのは、冷気を巧みに操るその戦法にあった。

氷を足場として、戦場を有利な地形に作り変える。吹雪によって視界を奪う。冷気によって相手の動きを鈍らせる。表皮を凍らせて防御力を下げ、関節を凍らせて動きを止める。そして大小の氷の刃によるトリッキーな攻撃。

それに対して、リュカは真正面から敵に立ち向かう正統派の戦い方をしていた。敗北は必然だったと言えるかもしれない。

パラメータの上では互角でも、戦術面では、狼王の方が一枚上手だ。

しかし狼王に勝たなければ、リュカも納得できないだろうし、俺たちも前には進めない。

「準備が必要だな」

「策を弄する、ということが言いたいの? 私のやり方じゃないわ」

リュカは俺の言葉に柳眉を逆立てた。だが俺にも言い分がある。

「いいかリュカ。策を弄したから、俺たちは今生きてるんだ。真正面からぶつかっていくだけが戦いじゃない。生きることだってそうじゃないか。策を弄さない生き物なんていないんだ」

「それは……」