「………………」

狼王は、固い毛並みの前足に、鼻を埋めた。

ウルフの遠吠えが聞こえる。

はぐれ者であれば、この森ではそう長くは生きられないだろう。

自分のように、強くなくては。

いや、もっと。もっと強くなくてはいけない。

孤独な者が我が身を守るために必要なのは、何よりも力なのだ――。





*  *  *





翌日。

窓からは、眩しい朝陽が射し込んでいた。洞窟の何か所かに鏡を設置していて、窓を照らすように工夫してあるのだ。爽やかな目覚めはとても大事だ。

今朝はたっぷりと肉を食べた。リュカも可愛い女の子の姿をしているけれど、けっこうな量を食べた。狼王との再戦のためだ。

「本当に、大丈夫なのか? 昨日の傷もあるだろう」

「体調は問題ないわ。ソラの軟膏と料理のおかげで、すっかり回復した。ありがとう」

「それならいいんだけど……」

念のためリュカのステータスを確認すると、HPはすっかり満タンになっていた。さすがは竜王の回復力といったところだ。

ミュウも、もにょもにょと肉を身体に吸収している。

「悪いが、お前にはもうちょっと食ってもらうものがあるからな、ちょっとって量じゃないかもしれんけど、まあ頑張ってくれ」

「?」

俺がミュウを台所に連れて行こうとすると、背後からリュカが話しかけてきた。

「我は勝つよ……絶対……狼王に……」