俺は床を睨んだ。調子に乗って森を我が物顔でのし歩いて、その結果、彼女を傷つけることになったのだ。

「………………」

リュカは、俺の背中をそっと撫でて言った。

「結論を急がないで。確かにあなたたちは、森の生態系を変えたかもしれない。でも自分の力が周囲に影響を及ぼすことは、たとえどんな生き物であっても通じる、摂理ではないのかしら」

リュカの言葉には、一理を超えたものがある。それでも――やはり責任を感じずにはいられなかった。

「でも、それが対処しなければならない問題なのは事実。私は次こそ、あの狼王を止めねばないと……」

「ロウオウ、ツヨイ、アブナイ!」

「ふふ……優しいのね……」

リュカは目を細めて、俺の膝に収まっている、ミュウを優しく撫でた。そして顔を上げると、その瞳には炎が宿っていた。

「次は負けない」

けして、勝算があっての言葉ではないのは分かる。あの戦いぶりを見る限り、リュカは策を弄するタイプではない。きっとまっすぐぶつかって行って、それで――。

「その戦い、俺にも一枚?ませてくれないか」

俺はミュウをぎゅっと抱いた。

「これは森全体の問題だろう。なら俺たちも君の言う摂理の一部だってことだ。君ひとりが、狼王を止める義務を負っているわけじゃない」

「ソラ……」

「俺たちは仲間だ。君ひとりを行かせたりはしない」