「そう。私たち固有種とは別の、〈第五の存在〉が現れたからよ」

「〈第五の存在〉?」

ミュウも知らないらしく、俺の膝の上で、もにょりと揺れる。

「そう」

リュカは続けた。

「私たちは本来争いを避けて、お互いの縄張りを尊重していたわ。でも〈第五の存在〉によって、魔物の生息域に揺らぎが生じた。得体の知れない〈第五の存在〉を恐れた魔物たちが狼王の縄張りを渡って、それが逆鱗に触れたの。私は狼王を宥めるために狼王の縄張りを訪れた。すべての魔物が享受すべき秩序のために。でも交渉は決裂した。狼王は縄張りを越境する魔物たちを許さなかった」

「その〈第五の存在〉ってのは、いったいどんな奴なんだ? 最近現れたってことはつまり……」

そこまで言って、ピンと来た。

「やっと気づいたのね。私も今日、初めて知ったことなんだけど」

リュカの金色の瞳が、まっすぐ俺を見つめた。

「〈第五の存在〉ってのはね。ソラ、ミュウ、あなたたちのことよ」

「………………!」

まさか俺とミュウが、魔物の生態系を乱すほどの存在になっていたとは。確かに今の俺たちは、相手がSSランクの魔物であっても、倒すのにそれほど苦労はしない。ここに追放されてたときには、想像もつかないことだった。しかし――。

「つまり、お前が瀕死の重傷を負ったのは俺のせいってわけか……」