「勇者の中の勇者、ということだ! おい、そちのユニークスキルはどうなっておる!」

王の錫杖が、俺を指した。

「あの……」

おそるおそる、答える。

「たぶん【錬金術】って、ユニークスキルじゃない……ですよね?」

俺がそう言った瞬間、場が凍りついた。金ボタンの男たちは、王に目を向けた。ローブの男は、ため息をついて、俺のステータスに杖を向けた。緑色の枠が宙を動いて、王の前に差し出された。

それを見た王は、顔を真っ赤にした。

「なんということだ! ユニークスキルもなければ、唯一持っているスキルも使えないではないか!」

王は錫杖の先を、絨毯に叩きつけた。

「なぜ勇者パーティーにこんな者が紛れ込んだのだ……」

怒りを露わにしている王とは対照的に【破壊神】山本はヘラヘラしながら俺を指さした。

「ってことは、こいつハズレのザコなんだ」

「マジかわいそー」

【魔女】田中が声を立てて笑った。王の瞼がヒクついた。

「グルーエル!」

「は」

グルーエルと呼ばれたのは、例のローブの男だった。グルーエルは懐から、白く濁ったガラス玉のようなものを取り出すと、こちらに向けた。

「貴様のような出来損ないは、魔物に喰われて死ぬのが妥当だろう。悪魔の森へ追放する」

周囲がざわめいた。俺は不安に襲われる。魔物? 喰われる? 何かが起きようとしている。

「悪魔の……森……?」