「待て待て、寝る場所はちゃんとあるから。あとシャワー浴びて、歯も磨いて!」

「しゃわー?」

「身体の汚れを落とす道具だよ……そうだ、先に傷をどうにかしないとな」

俺はリュカの服を緩めて、ベッドにうつ伏せに寝かせた。やはり先ほどの応急処置では届かなかった傷が、いくつかある。

「少し沁みたら、ごめんな」

「そんなことで、どうこうわめいたりしないわよ」

リュカはフンと鼻を鳴らした。

女の子の身体に軟膏を塗るのは、けっこう緊張する。アザになったところを、できるだけ押さえつけないように指を滑らせていく。肌の隆起に合わせて、自然と力の入れ方が変わってくる。気をつけて、気をつけて。ぬるるん、むにゅうり。

「んん……あんっ」

リュカが急に声を上げて、身体がビクっと跳ねた。

「ど……どうしたの……」

心臓がバクバクいっている。リュカに尋ねると、なんだかぼうっとして、赤い顔をしていた。

「なんだか今、熱い感覚が背中を上ってきて……なんかくすぐったいんだけど、妙に心地よいというか……んんっ、初めての感覚で…ソラ、もういちどやってくれない?」

とろんとした表情で、そんなことを聞いてくる。

「これはそういうサービスではありません!」

いかんいかん。俺は頭の中で般若心経を唱えながら、無心でリュカの治療を終えた。

「シャワーを浴びるときは、あんまり擦っちゃ駄目だぞ」