「……勝負がついたか」
しかし竜王を放置して住処に戻ることはできない。俺にはやらなければいけないことがある。倒れているとはいえ、竜王の危険は未知数だ。しかしここで怯えていては、この森からの脱出は望めない。
「よし、行くぞ」
「ソラ! アブナイ!」
そんなことを言いながらも、ミュウはついてきてくれる。
俺たちは丘を降りて、まだ煙を上げている広場へ、倒れ伏した竜王のもとへと向かった。この森は弱肉強食。竜王が魔物どもの餌になってからでは遅い。
「モウ、リュウオウ、タオセル?」
「いいや、もうちょっと穏便にやるさ」
「?」
ミュウはぴょこんと身体を斜めにした。
「ともかく行こう」
巨木に突き刺さった氷の刃が溶け、滴った水が焼けた地面で蒸発する。燃え上がる木々、凍り切った灰――竜王と狼王の戦いの跡は、地獄の様相を呈していた。
「ソラ! ヤケドスル!」
「ありがとう、気をつけるよ」
俺は慎重に道を選び、竜王へと近づいた。近づいて、見上げた。
――なんて大きさだ。
頭だけで、俺の背丈を超えている。俺を丸呑みにするのも容易いだろう――瀕死でさえなければ。縦長の瞳孔を持った、巨大な金色の瞳と見つめ合う。圧倒されそうになるが、けっしてそれを気取られてはならない。
「………………」
竜王の巨大なまぶたが、閉じられた。
「構わない……私を食べればいい……」