俺はこの森に来てから、かなりのレベルアップを重ねてきた。けれども今の自分に、魔物を仲間に引き入れるほどの実力が備わっているとは思えない。

だから、俺は戦いを眺めているのだ。

眺めることしかできないからじゃない、眺めるのが、俺の「手」だ。

焼け野原はどんどん広がっていく。狼王は凍らせた木々を足場にして、竜王を中心に弧を描くように走る。その尾を炎の鞭が追いかけるが、狼王がわずかに速かった。



――シュパァッ!



狼王が虚空を斬り裂くと、発生した無数の刃が竜王へと襲い掛かった。そのときちょうど、竜王は炎を吐き切ったところだった。陽炎の揺らぐ中、氷の刃が冷気の尾を引きつつ、竜王の鱗に殺到する。

しかし竜王の強靱な鱗に対して、致命傷足り得る攻撃ではない。氷の刃は粉々に砕け散る。竜王は大きく翼を広げて、巨躯を宙へと持ち上げた。竜王は滑空しながら、鋭い爪を狼王へと向けた――しかし、スピードは狼王の方が上だ。狼王は竜王の巨大な爪を?い潜り、懐を狙って複数の氷の刃を走らせた。同時に激しい吹雪が巻き起こる。



――グルルルルルルルルオオオオオオオ!!