「ごめんな、もうちょっと様子を見させてくれ」

ごうっと吹き出された炎が、すでに炭化しきった地面を焼き払い、あまりの高熱に岩石が溶け始める。地面を舐めながら襲い掛かる炎に、狼王は鋭い雄たけびで答えた。炎がふたつに割れて、背後の森が燃え上がった。

――今できることを考えなければならない。

裂けた炎の間を縫って、狼王の氷の爪が舞う。しかし炎を吹き出す竜王のあぎとの直前で蒸発し、周囲に霧が広がった。それがこっちにまで押し寄せてきて、一瞬視界が遮られる。霧は吹雪に変わり、いよいよ視界が悪くなった。

「ニゲナイ!? ニゲナイ!?」

「ん……」

ミュウは慌てているが、俺はじっと吹雪の奥を見つめていた。

「ここは逃げない。大丈夫、俺を信じてくれよ」

裾にしがみつくミュウをくにくにっと撫でた。

「どっちみち、この森から出るには奴らとやり合わなきゃならない。縄張りから出るってのは、おそらくそういうことだからな」

縄張りを張るということは、そこからの〈侵入〉はもとより〈脱出〉をも許さないということだ――ならば。

「味方につける……というのは手かな」

「アブナイ! リュウオウ、ロウオウ、コワイ!」

「簡単だとは思ってないさ。手を打たなきゃな」