俺はその光景に目を疑った。バジリスクなどとは比べ物にならない巨大な魔物が二匹、すさまじい戦闘を繰り広げていたのだ。

一匹が首をうねらせて、巨大なあぎとを開く。こちらまで火傷しそうなほどの炎が噴き出し、森を焼き払う。もう一匹はその巨体からは想像もつかないような高い跳躍を見せて、それを避け、振り向きざまに虚空を切り裂く――その瞬間、氷の刃が発生して、相手に襲い掛かった。

「話に聞いた通りだな、間違いない……あれが竜王と、狼王か」

鱗に覆われた、どっしりとした体躯。長い首の先に、二本の角を持った竜王。

銀色の毛皮に覆われたしなやかな巨体に、鋭い爪と牙を持った狼王。

焼き払われて炭化した大木が、次は凍り付いて砕け散る。熱波と冷気が烈風と共に吹きすさんだ。しかしなぜ奴らは争ってるんだ? 互いに縄張りを持っているんじゃなかったのか。

「ソラ! ニゲル! ニゲル!」

ミュウが俺の裾を引っ張って跳ねる。俺はミュウを撫でてなだめながら、二匹の壮絶な戦いを眺めていた。

燃やされ、凍らされ、砕かれ、斬り裂かれ、森林が破壊された戦いの場は、いびつな広場と化している。巨木が倒れ、低レベルの魔物が逃げ惑う。



――グルルルルルルルルオオオオオオオ!!

――ウオオオオオオオオオオオオオオン!!



同時に上がった雄たけびに、空気がビリビリと震える。ミュウが縮み上がった。