俺は保存しておいたモモイノシシのバラ肉を食べることにした。《構築》した中華鍋を、石を積んだだけのオーブンの上で振るう。肉に焦げ目がついてくると、サザンの実を入れる。これが溶けて、みりんみたいに肉に艶と甘みを与える。後は岩塩を振って出来上がり。簡単な料理だ。肉汁とサザンの果汁による、うっとりするような匂いが洞窟に広がる。

「!」

さっきまでまだ眠っていたミュウが、匂いに気付いてぴょんこぴょんこと跳ねた。俺は木の器に、肉を盛ってやる。

「ヤケドするなよ」

ミュウは、俺の言葉を知ってか知らずか、肉に思い切り噛り付いた。

「みゅ!」

ひときわ大きく飛び跳ねる。

「おい、熱かったのか?」

ヤケドは治癒の薬草で治るのだろうか。俺が心配していると、

「みゅ! みゅ!」

ミュウは嬉しそうに、どんどん肉を身体に取り込んでいく。

「驚かせるなよ……美味いのか?」

ぽいんぽいんと身体を揺らして、ミュウは再び木の器にがっついた。

「そんなに美味いのか……なんか嬉しいな」

自分でも、ひとくち食べてみる。

「確かに我ながらいい出来だ」

サザンの実の甘みが、モモイノシシの肉の旨味を閉じ込めて、良い感じの照り焼きになっている。岩塩はちょっと癖のある香りがするけれど、それが上手く味を引き締めている。