「ちなみにヴァージニア。聞くのが怖いんだけど」

「なにかね」

「邪龍アジ・ダハーカって、あれ、作るのにどれぐらいかかったの?」

「七年と二ヶ月だな」

 不死者の時間感覚やべえ。戦艦大和でもその半分以下なんだけど。そんな大力作を一瞬でぶっ壊しちゃって、いまさらながら申し訳ない。

「君のれーざー彫刻技術があれば、【春風駘蕩】と【永久機関】のスキルを石像に刻み込む作業は、一週間まで短縮できると、私は踏んでいる」

「踏んでいるったって、めちゃくちゃ神経を使う精密作業だろ。当然、毎日ちゃんと休憩は挟みながら、無理のないペースでやるんだよな……?」

「……まあ、中断できない作業もあるからな……一週間程度であれば問題ないだろう」

 その考え方はブラックを通り越して闇。深淵。アビス。

 だが、一度やると言って始めて、多くの者を巻き込みながらここまできた計画だ。いまさらしんどいからやめますなど言えるはずもない。なにより。

「オレたちの谷を、よろしく頼む、ソラ」

「ソラどの、ワレワレも全力でお支えいたします」

「ありがとニャーっ! ソラどのはやっぱり救世主ニャんだニャーっ!」

 ネコ族たちから容赦なく浴びせられるこの期待の視線から、逃げることなどできようはずもない。決めろ、覚悟を。


 それから地獄の一週間が始まった。

 襲いくる強敵の数々、睡魔、飢え、目の疲れ、飽き。

「ソラ、ポーションよ! これでMPを回復して!」

「ごめん、いま手が離せない」

「仕方ない、私が飲ませてやろう」

「おぼっ、おごぼぼぼぼぼぶァ、ばあァ⁉」

 次々と倒れていく仲間たち。(疲労で)

「お兄様、どうやらわたくしは、ここまでのようですわ……。あとのことはお願いします……。ああ、あの大空を、もう一度、飛たかっ……ガクッ」

「ソラ……わたしの最後のお願い……聞いてほしい……。『錬金術師VSサメ2』……かならず、完成させて……ガクッ」

 ある者は錯乱し、ある者は狂気に呑まれる。(疲労で)

「みゅ、みゅみゅ……ラメェン、タベタイ……」

「あら~、ソラずいぶん肩がこってるね~」

「お願いだから揉まないでね肩とれちゃうから」