『剣神アランの魔石を《抽出》しました』

『剣神アランのスキル【春風駘蕩】を取得しました』


すごく久々に見たなこのメッセージ。さてさてスキルのほうは、と。


【春風駘蕩】:風を自在に操り、心を穏やかにする。


 今まで得てきたスキルに比べると、なんだかすごく牧歌的だ。まるで戦いとはまったく無縁なスキルのように思える。逆に言えば、このスキルをあそこまで使いこなしていたアランは、やっぱり尋常な剣士ではなかったということなのだろう。

「《抽出》は成功しました」

 俺の声に、ギャラリーからおおーっと歓声があがる。あとはこれを、ヴァージニアいわく、適当な無機物に転写すればいいとのことだが。無機物か、それなら。


《融解》

《精錬》

《構築》


 【錬金術】のスキルで、このスキルの母体にふさわしい石像を作る。俺のイメージで作るとどうしても禍々しい形状に仕上がってしまうところだが、今回に限ってはモデルがいるので安心だ。

「みゅ!」

 剣神アランの像。谷を見守る象徴として、これ以上のものはないだろう。

「おお、これはニャんと見事ニャ……。タヌキか?」

「シュリ、それはさすがにソラどのに対して失礼だ。これは……えっと、うん。ブタ?」

 君ら、俺がモデル見ながら作ってるとこ、見てたよね。俺の造形センスがいまひとつなのは、このさい致し方ない。そこはもう目をつぶってもらおう。つぶれ。

「あとは、こいつにスキルを転写するだけだな」

「ああ、一週間のハードスケジュールだが、ソラならばやりきれるはずだ」

「……え? 一週間かかるの?」

 聞いてないなあ。それたぶん最初に言わなきゃいけないやつだなあ。


 さて、やることはいたって単純。魔法を封じ込める水晶と同じ要領だ。かつて王国では転移水晶ひとつ作るのに二年を費やしたという。俺が【破壊光線】を応用したレーザー彫刻を用いたことで、大幅に作成期間の短縮に成功したものの。今回転写するのは魔法ではなく、スキルだ。原理はそう変わらないとはいえ、俺にとっては完全に初の試みとなる。