「君はたしかに、経験という点においてはまだまだアランには及ばないかもしれない。だが君の強みはそんなものではないだろう」
その声に、まだ諦めたくないという気持ちが、沸々とわきあがってくるのを感じる。誰よりも、古の伝説よりも、かっこいい英雄でありたいと願う気持ちがわいてくる。
「誰よりも柔軟で自由な発想。そして良いと感じたものはすぐに取り入れる順応性。それこそが君の武器であったはずだ。違うかね」
「ああ、その通りだ。ありがとう、やっと思い出した」
俺は改めて剣を取り、くずおれかけた両脚に力を込める。
「俺は、英雄だ」
柔軟な発想で、組み立てる。道筋を。
「いいぞ、どこからでも打ち込んでこい」
「わかった。じゃあ遠慮なく」
俺は剣を、『投げた』。
【天動瞬雷】
物質を超高速で移動させる、レールガンのスキル。剣はアランに向かって加速する。
「一直線に突っ込んでくるだけとは笑わせるニャ!」
「まだまだァ!」
《門》
空間上の点と点を繋ぐ魔法。それを同時に、多方面に展開する。高速の剣が、全方位からアランに襲い掛かる。だがアランは《門》の展開地点から軌道を予測し、それさえも避ける。
「ほう、こりゃたまげた」
「ここからだ!」
【天動瞬雷】――二式!
エル=ポワレの魔法学校で、いけ好かない自称天才少年が見せてくれた、魔法の応用技。直線的な軌道を、魔法で無理やり捻じ曲げる。ついに剣が、アランをとらえた。アランは野性的な反射神経で剣を構え、間一髪で弾く。
「意外と、やるッ……⁉」
「まだだ‼」